第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム20(III-SY20)
新生児・乳児期の右室流出路狭窄に対するカテーテル治療

2022年7月23日(土) 10:10 〜 11:40 第3会場 (大ホールC)

座長:藤井 隆成(昭和大学 小児循環器・成人先天性心疾患センター)
座長:藤本 一途(国立循環器病センター 小児循環器内科)

[III-SY20-05] BTシャントリスク例に対する右室流出路ステント留置術の検討

西川 浩1, 大橋 直樹1, 吉田 修一朗1, 吉井 公浩1, 佐藤 純1, 鈴木 謙太郎1, 朱 逸清1, 武田 紹1, 櫻井 一2, 野中 利通2, 櫻井 寛久2 (1.JCHO中京病院中京こどもハートセンター小児循環器科, 2.JCHO中京病院中京こどもハートセンター心臓血管外科)

キーワード:ステント留置術, 右室流出路, ファロー四徴症

【はじめに】ファロー四徴症類縁疾患の BTシャント術(BT)では周術期の肺血流変動により状態悪化を来す例も経験する。右室流出路ステント留置術(ST)はBTに比べて侵襲が少なく血行動態も安定しやすい。当院ではBT術後高肺血流性心不全が懸念されるハイリスク例(安静時高酸素濃度例や生後1ヶ月未満など)に代替治療として2019年よりST導入した。【目的】当院でのST例のアウトカム及び改善点を検討すること【対象と方法】ST群4例を2011年1月から2021年9月に生後2ヶ月未満で行ったBT群9例と比較し、且つSTの手技的問題点を後方視的に検討した。【結果】BT群とST群において介入時日齢9-49(中央値34、以下略)vs7-57(24)(N.S.)、介入時体重(kg)1.7-4.2(3.8)vs2.6-4.0(3.3)(N.S.)、術前安静時SpO2(%) 76-82 (78)vs80-99(88)(p<0.05)、術後在院日数11-89(12)vs7-33(17)(N.S.)、ICRまでの待機日数168-494(265)vs3-220(184)(N.S.)、ICR前PAindex(mm/m2)159-372(268)vs128-626(410)(N.S.)、ICR時の弁輪温存66%vs50%(N.S.)、人工心肺時間(分)137-301(220)vs151-242(230)、大動脈遮断時間(分)48-199(125)vs114-256(165)(N.S.)であった。合併症はBT群でシャント狭窄・閉塞3例、壊死性腸炎1例。ST群ではTR2例認め1例は心不全進行による準緊急ICRを要した。死亡例・神経学的後遺症発生例は無かった。【考察】STはBT ハイリスク例に行われ、ステントはICR時除去されるが人工心肺時間、大動脈遮断時間に影響は無かった。合併症でのTRはステントの低位が問題であり、右室流出路へのデリバリーに改善を要する。BTハイリスク例では温存を求めず弁輪を跨いだステント留置を行う計画でTRを避ける事が可能と思われる。【結語】STは心内修復術の時期や肺動脈形態など中長期的予後も踏まえる必要はあるが、BTの代替治療の役割を果たし、経験の蓄積や流出路形態により弁輪温存も可能となり得る。一方で適応外使用であるため倫理的側面には注意を要する。