[III-SY21-01] 子どもの脳死下臓器提供と臓器移植 ~学校教育における小児科医の役割~
キーワード:臓器提供, 小児科医, 学校
小児救急・集中治療に携わる立場として、これまで脳死下臓器提供、臓器移植には多面的に関わってきた。提供する側と提供される側の両者と関わり、それぞれの立場にある家族や患児らと様々な思いを現場で共有し、感じてきた。症例毎に背景も異なり、家族の反応、考え方も異なる。こうした特殊な対応を経て、5年以上前から学校教育現場でも子どもたちにその経験を伝える機会が与えられている。本企画ではいくつかの教育現場との協働を紹介したい。これまで中高生および大学生を対象に子どもの命の問題を伝えてきた。小児医療には、解決しなくてはならない子どもたちの自殺という課題もあり、子どもたちが多感な時期に自身と他者の命を深く考える機会を医療と教育の専門家が協働して伝えることは重要であると感じている。授業を終えた子どもたちからの感想は毎回想像を超える内容が記載されている。本企画では小児科医が現状を超えてさらに発信できるメッセージについても考えてみたい。小児医療の世界ではアドボカシー(代弁)が声高に叫ばれているが、心臓を病んだ子どもたちのアドボカシーはだれが行うべきなのだろうか。心臓病で苦しむ患児、家族の悩みは関わった人間にしか分からないことも多い。以前は、「臓器狩り」などと揶揄され、移植医療に関わる側が臓器提供の理解推進に発言することをためらう傾向があったかもしれない。しかし、近年のわが国ではそのような忖度は必要ない状況になりつつある。一般社会の認識は進んでいる。子どもの命についてさらなる国民の適切な理解促進に向けて様々な立場の専門家が積極的に協力し合い、社会における議論を発展させていかなくてはならない。学校教育の場がその一つとしてますます重要性を高めており、教育関係者と医療者の協力、体制がその成否のカギを握っている。