[III-SY21-02] 小児循環器科医が実践するいのちの授業
キーワード:脳死臓器移植, いのちの授業, 移植医療
【背景】 1990年代後半から学校教育現場でいのちの大切さを学ぶ重要性が論じられており、もともと限定的に行われていたであろう「いのちの授業」は近年、医療現場以外からも様々な形で行われている。またSARSコロナウイルス2流行に伴い、授業形態にも変革が生じている。【脳死臓器移植といのちの授業】脳死臓器移植は命のリレーとも称され、治療経過が順調であれば、最重症患者がまさに生き返るような臨床体験をするダイナミックな治療であるが、一方で家族の死をどのように迎えるのかを選択する治療であり、対比も含めて授業内容としては「分かりやすい」のが特徴である。小児循環器医が展開する授業としては、移植医療の経験がある医師が小学校で行った2011年がおそらく最初であり、そのスタイルは映像資料を用いて児童の興味を引き出しつつ、最後の選択について家族とともに考えてもらう点(宿題)がクライマックスとなっている。このスタイルは、その後多少アレンジされつつ、数名の小児循環器医に引き継がれている。多様かつ対立し得る価値観が存在し、それらに誠実に向き合い、考え続けることこそが道徳教育で養われるべき基本的資質(中学校学習指導要領2017)であることから、本件は引き続き授業コンテンツの一つとして有力な選択肢である。【今後の課題】移植実施施設以外の小児循環器医にも使用可能なツールは複数ある。特に音声を伴う動画はデジタル世代には有効である。臓器移植ネットワークが公開している題材などの活用について改めて周知する。また、学習指導要領は「どのように学ぶか」について主体的・対話的で深い学びの視点を目標としている。授業形態の変化もあり、演者も年内にWEBでの授業を試みる予定であるが、新たな形の中でどのように生徒が主体的・対話的に学べるのか、学校担当者と相談をしている。