[III-SY21-03] 小説に描く心臓移植-「たすき」に込めた想い-
キーワード:heart transplantation, novel, discussion
「僕に心臓が届けられるっていうことは・・・誰かが亡くなったっていうことだよね・・・」本邦では2010年の臓器移植法改正によりドナーの数は増えつつあるが他国と比較して少なく、2020年の人口100万人あたりのドナー数は0.99人(米国38.35人)、脳死後臓器提供者は人口1億2500万人に対し年間70~100人(米国3億3000万人に対し約12000人)である。臓器移植を希望している患者約15000人に対し臓器移植を受けられる人は年間約400人であり、移植待機中に亡くなる人も多い。2021年の世論調査では、死後に臓器を提供するという人が39.5%であるのに対し、臓器提供意思表示カード記入率は10.2%であった。家族の意識調査では、死後に臓器提供するという家族の意思を尊重する人が90.9%であるのに対し、家族が意思表示をしていない場合の臓器提供の決断は85.6%が負担に感じるとしており、家族内で臓器提供に関する話し合いをしたことがある人は43.2%であった。臓器提供者が少ない理由として、脳死を人の死として受け入れることの抵抗感、臓器提供施設が限定されている等があるが、意思表示カード記入率の低さ、家族との対話率の低さ、認識不足も挙げられている。心臓移植には「命の受け渡し」が必要である。移植医療には様々な立場と多様な考えが存在しており、臓器提供、移植には1つの正解というものがない。移植医療は決して他人事ではなく、誰にでも起こり得るものであり、普段から家族や学校で移植医療について話し合い、関心を持つことは大切である。私は多くの人に移植医療について知ってもらいたいと考え2021年に小説を自費出版した。移植医療について考えるきっかけの一つになれば幸いである。「ドナーの気持ち、他人を想う優しい気持ち、ドナー家族の気持ち、深い悲しみ、その命に込めた尊い想い、そして僕たちに向けられたドナーとその家族の願い、深い想いの込められた“たすき”が今まさに手渡されたのだ・・・」