The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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シンポジウム

シンポジウム21(III-SY21)
学会と教育の連携委員会

心臓移植を題材とした学校教育との連携・社会への発信ー今小児循環器医ができること

Sat. Jul 23, 2022 12:50 PM - 1:50 PM 第3会場 (大ホールC)

座長:犬塚 亮(東京大学 小児科)
座長:内田 敬子(慶應義塾大学 保健管理センター)

[III-SY21-04] 小学校における脳死・臓器移植の授業

佐々木 昭弘 (筑波大学附属小学校)

Keywords:小学校理科, 脳死, 臓器移植

◆第6学年「人の体のしくみと働き」では、呼吸・消化・循環の仕組みによって生命活動が維持されていることを学習する。ここに、「生」とは真逆の「死」という視点を加えた学習を設定する。
物事の本質は多面的であり、相反する概念との比較によってこそ浮き彫りになっていく。理科で学習する「生命を維持する働き」もまた、「生」と「死」との比較によって多面的な理解へと深化させることができると考える。
◆臓器移植に対する考え方は、2010年に改定された臓器移植法が日本で施行された後でも実に多様である。特に、ドナー(臓器提供者)側とレシピエント(移植希望者)側では、「脳死」を人の死と考えてよいのか、その解釈に大きな隔たりが生じてしまうこともあり、未だに議論が続いている。
もしも身内が「脳死」と判定されたとする。心拍や体温もあるにも関わらず「死んでいる」と自分が納得できるのか、子どもたちの多くは自信がない。しかし、臓器移植を待つ患者(レシピエント)に視点を移したとき、やがて死が訪れる脳死者の臓器を提供(ドナー)し、命をつなぐことの価値は理解できる。
この葛藤場面に子どもたちを立たせてみたい。そして、レシピエントとドナー双方の視点で考え、「脳死・臓器移植」に対する自分なりの立場を決めていく。ただし、ここでの立場とは現時点でのものであり、今後の学びや生活の中で得られる情報をもとに変化し続けることを前提としている。ここに、自分の考えとは違う他者との共通了解可能性を見いだそうとする態度を育成できる可能性があると考える。
◆人の「死」を小学校の学習で取り扱うことは、死への恐怖をいたずらにあおることには繋がらない。学習後のアンケートでは、自分にとって「生きること」の価値を見いだそうとする児童が多かった。