[III-TRS01-01] 先天性心疾患患児が運動することによる身体への影響
キーワード:先天性心疾患, 運動, 心肺運動負荷試験
運動は予防医学の観点からその有効性は確立している。循環器領域であれば、「狭心症の約2/3は心臓リハビリテーションで治療可能。」という内容が日本循環器学会のガイドライン記載されているように、成人の虚血性心疾患における心臓リハビリテーションは治療の一環になっている。一方で、先天性心疾患患者における運動やトレーニングの有効性については、エビデンスは少なく明確ではないとされている。このような状況にあって、筆者は先天性心疾患患者に対して、定期的かつ適度な運動を推奨する立場をとっている。先天性心疾患患者の半数は小児であり、患者は先天性心疾患患者であると同時に子どもである。子どもにとって運動や体を使った遊びは、基礎体力の向上だけでなく、人間関係やコミュニケーション能力が育まれるなど、心身の発達にとって重要な役割を担うと考えるからである。運動を推奨する上で、「適度な運動」とはどの程度の運動を指すのかということを示すことが重要であり、その目的で当院では心肺運動負荷試験を取り入れた外来診療を行っている。健常者では運動により心拍出量は5倍に増えるとされている。先天性心疾患患者であっても、病態により差はあるが2-5倍程度の心拍出量の増加が想定される。心肺運動負荷試験では運動中の血行動態の変化を再現し、運動中の不整脈や虚血といったリスクを明らかにすることができる。それと同時に、運動耐容能を表す最大酸素摂取量を算出し、個々の患者に対して本人の体力レベルを示すことができる。これらの情報を用い、患者一人一人に対して「適度な運動」のレベルを示せるよう努力している。