[III-TRS01-02] 先天性心疾患患児の身体活動と運動
Keywords:先天性心疾患患児, 運動, 生活の質
先天性心疾患(Congenital Heart Disease : CHD)患者は、年間100人に1人の割合で出生されている。2000年代にはCHD外科治療の標準化が進み, 新生児期手術の成績は大きく改善され、より重症度の高いCHD患者が急増している現状がある。そのため、生命予後の改善に加えて、遠隔期における生活の質(QOL)の向上が今後の重要な課題となっていることは周知の事実である。CHD患児は、出生直後から入院し、0歳~13歳頃までの間に手術を繰り返す特徴がある。スキャモンの成長曲線では、子どもの神経系(脳、脊髄、視覚器、頭囲)の発達は、6歳までに約90%、12歳頃までにほぼ100%に達するとされ、一般系(身長、体重、骨格、筋肉量)の発達においては、出生直後より急激な成長を遂げ、一時緩やかに成長する時期を経て、10歳以降再び急激に成人の能力へと成長することが知られている。CHD患児は、神経系や運動発達のゴールデンエイジと呼ばれる時期の活動制限により、身体活動量低下や運動発達の遅れを惹起することが予想される。当院では、乳幼児は必要に応じて、また12歳以上の術後は全例、リハビリテーション(リハビリ)を実施している。患児の術後リハビリにおける重要な課題は、呼吸、循環を保ちつつ患児の興味のある遊びを通して運動発達を促していくという点である。そのため多職種との協働は必須であり、常に患児に接する看護師、ご家族の協力が身体活動量や運動を促すうえでは重要と考える。従来、心疾患において運動が禁忌とされていた時代背景もあったが、現在では至適な運動を維持することが生命予後やQOLの改善に関連するという報告もあり、その重要性が見直されている。また身体活動量の低下は将来的な社会生活にも影響を及ぼすことが予測され、幼少期より予防のための方策が重要と考える。本シンポジウムでは、患児のQOLを高めるための身体活動量や運動介入について当院での経験と今後の課題について述べる。