The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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会長要望セッション

会長要望セッション6(III-YB06)
患者目線の医療とは-こころを紡いで、いのちを繋ぐ-

Sat. Jul 23, 2022 9:25 AM - 10:55 AM 第1会場 (特別会議室)

座長:土井 庄三郎(国立病院機構災害医療センター 小児科)
座長:西畠 信(鹿児島生協病院 小児科)

[III-YB06-06] 心臓病児者・家族がかかえている課題解決のために医療者と患者・家族の連携をめざして

神永 芳子 (全国心臓病の子どもを守る会)

Keywords:移行医療, ライフステージ, 社会的支援

会が設立された当時の主の課題は、子どもの「命を救う」こと、そのための公的医療保険や医療費助成制度の整備・拡充、手術のための血液確保の法整備などであった。その後のめざましい医療の進歩と、それを支える法律や体制の整備が進展したことで、多くの病児は成人をむかえられるようになった。また、インフォームドコンセントの重要性が認識されてきたことで、医療者と患者・家族との関係性にも変化が見られるようになった。現在では、成人患者の増加により患者・家族がかかえる課題は大きく変化しており、生涯を通じた医療体制の整備と、移行医療の実現が求められている。患者のライフステージにおいては、ステージごとにさまざまな課題があり、世帯への生活保障、教育環境の整備、就職と就労継続、結婚、出産・子育て等と多岐にわたる。とくに成人後には、遺残症・続発症の増悪や成人期疾患の発症などに対応した医療的な課題がある。また、医療費負担の増加により、働けない患者、障害を重複している患者は、一層深刻な問題をかかえており、患者の「自立」という重要な課題がある。患者自身の自立をめざす教育と生涯を通じ必要な医療や生活を支える社会的支援が求められている。私たち患者・家族はすべてを医療者まかせにせず、病気のこと、治療の必要性などを正しく理解する努力を続けていかなくてはならない。医療者には患者の社会的問題について支援する視点をもっていただくことを望みたい。そのためには、日頃からの医療者と患者・家族のよりよい信頼関係が重要と考える。医療者と親が連携して病児に向き合い、小児期から段階的に自立に向けた対応をすることで、自らの医療の選択を考えられる自立した患者へと成長できる「移行医療」が実現できる。生涯にわたり切れ目のない医療体制の確立と、患者の生活を支える社会的な支援の充実により、心臓病児者は充実した人生を生きることが可能となるようにしたい。