第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望セッション

会長要望セッション7(III-YB07)
難治性乳び胸に対してどうアプローチしていくか

2022年7月23日(土) 08:30 〜 10:00 第2会場 (大ホールA)

座長:藤井 隆成(昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)
座長:松井 彦郎(東京大学 小児科)

[III-YB07-01] 当院における乳び胸症例と内科的治療

林 拓也1, 岸本 健寛1, 梶川 優介1, 植田 育也1, 星野 健司2,3, 野村 耕司3 (1.埼玉県立小児医療センター 小児救命救急センター, 2.埼玉県立小児医療センター 循環器科, 3.埼玉県立小児医療センター 心臓血管外科)

キーワード:乳び胸, 脂肪制限, オクトレオチド

「はじめに」先天性心疾患の周術期管理で、難治性の胸水や乳び胸の管理に難渋することがある。乳び胸水の増加は、水分だけでなく、IgGなどの抗体や凝固因子など生体に必要な物質が漏出するため、長期にわたり水分補正、漏出物の補充が必要になる。当院では乳び胸の診断基準を独自に作成し、基準を満たした症例について治療介入を行っている。「当院の治療方針」乳び胸の診断基準は、1.胸水T.chol/血清T.chol<1、2.胸水 TG≧110mg/dl、3.胸水中細胞数≧1000/μL(リンパ球分画>80%)としており、特に1、3を重視している。治療介入としては、脂肪制限栄養に変更するが、量が増大するようであればオクトレオチド投与を行う。胸水量が多い場合は禁飲食も併用するが、1~2週投与を行っても治療効果が見られない場合は、血管エコーやリンパシンチグラフィー(LS)を行い、胸管結紮や、リンパ管静脈吻合(LVA)、胸膜癒着術などの外科介入も検討する。「当院での成績」2020年9月から2022年3月に行われた手術278例中、46例に乳び胸と診断し治療介入を行った。治療介入は、脂肪制限食のみ26例、オクトレオチド11例、禁飲食6例、外科的介入を行ったものは3例(胸管結紮術1例、LVA2例)であり、LSを行った症例は11例であった。当院では乳び胸の治療反応は週単位で捉えている。~1週:脂肪制限食で約半数は改善している。1~2週:脂肪制限に加え、オクトレオチドや絶飲食を併用する。この介入により胸管流量が減ることに加え、治療期間を経ることでリンパ側副路の発達するため、乳び胸水の改善が期待できる。3~4週:上記介入で乳び胸水の改善がみられないものにはLSを行う。LSでリンパの漏出部位を確認し、胸管損傷があれば胸管結紮を、胸管損傷がなければLVAを検討する。今後は、内科的治療として、交感神経作用薬であるエチレフリンン、免疫抑制剤であるシロリムスについても検討を加えたい。