第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望セッション

会長要望セッション8(III-YB08)
若手参加型セッション: Case Challenge

2022年7月23日(土) 10:10 〜 11:40 第2会場 (大ホールA)

座長:石井 卓(東京医科歯科大学病院 小児科)
座長:永井 礼子(北海道大学病院 小児科)

[III-YB08-02] 乳児期大動脈炎後、遠隔期に巨大胸部大動脈瘤を呈した女児に対し、胸部大動脈人工血管置換術を施行した1治験例

竹下 斉史1, 水野 友裕1, 八島 正文1, 鍋島 惇也1, 石井 卓2, 細川 奨2, 山口 洋平2 (1.東京医科歯科大学大学院 心臓血管外科, 2.東京医科歯科大学 小児科)

キーワード:大動脈瘤, 大動脈炎症候群, 大動脈解離

<症例> 10歳, 女児
主訴:MRIにおける胸部大動脈径の拡大
現病歴:生後3ヶ月時に発熱・血液検査上炎症反応の上昇を認め, 精査の造影CTで肺動脈と広範な大動脈壁の不整・肥厚あり. 専門機関で大動脈炎症候群と診断され, アスピリン内服が開始された. 定期的MRI撮像で外来経過観察されていたが, 画像所見の変化や炎症所見なく, 8歳時にアスピリン終了, 同機関は終診となっていた.
9歳時に近医で経過観察目的に施行したMRIで弓部大動脈拡張を認め当院紹介受診. 造影CTにて弓部から下行大動脈は最大短径51mmまで拡大していた. 約2ヶ月後PET-CTにて瘤径は53mmに拡大, 弓部から下行大動脈にかけて軽度のFDG集積(SUVmax 2.1)を認めた.
既往歴:右鼠径ヘルニア(6歳時に手術加療)
家族歴:母:IgA腎症、母方叔父:大動脈解離(39歳)・IgA腎症、母方祖母:大動脈解離(62歳)・右視野欠損・白内障
現症:体重 27kg (-1.0SD), 身長 138.9cm (-0.5SD) , 体温 37.2℃
血圧86/54mmHg, 上下肢血圧差なし
脈拍 117回/分, 呼吸数 25回/分, SpO2 98% (room air)
心音 整・雑音聴取せず, 呼吸音 清・左右差なし
四肢 橈骨動脈, 足背動脈それぞれ左右左なく良好に触知. 浮腫なし.
検査所見:
[血液検査]
WBC 7300/μL, Hb 13.7g/dL, Plt 23.7万/μL, LDH 229U/L, T-Bil 0.7mg/dL, Ferritin 21ng/dL, CRP 0.02mg/dL, BNP 8.9pg/mL, IgG 1079 mg/dL, IgA 121mg/dL, IgM 140ml/dL, sIL-2R 761U/mL, 血清補体価正常, ANCA関連抗体陰性, 抗核抗体陰性
HLA typing: A26, A31, B7, B62
[造影CT]
生後3ヶ月時:肺動脈, 大動脈の拡張・蛇行.
10歳時:弓部から下行大動脈にかけて最大短径53mmまで拡大. 一部解離所見あり.
[PET-CT]
生後3ヶ月時:大動脈弓にFDG集積あり.
10歳時:弓部から下行大動脈にかけてFDG集積(SUVmax 2.1)あり.
本症例の追加検査項目, 術前後の内科治療, 手術加療のタイミング, 手術の際に最も適切と考えられる人工血管置換範囲について議論したい.