[I-CSY02-03] 小児心臓外科診療体制の地域化対策
キーワード:小児心臓外科診療体制, 地域拠点化, 集約化
未曾有の少子高齢化が進むわが国において、小児医療の充実と発展の重要性に関しては論を待たない。これまで小児循環器科医と小児心臓外科医が、心臓病を持つこどもと家族のために、多領域の専門職を交えたチーム医療により、互いの知識と技術を駆使して協働してきた。しかし近年、深刻な医師不足に加えて医師の地域偏在、診療科偏在、移行期医療、働き方改革など、診療体制の維持・向上において解決しなければならない多数の問題が噴出している。わが国には先天性心疾患手術施行施設が多数存在しているが、多くは年間手術数が50例未満の小規模施設である。JCVSD-Congenitalを用いた全国調査の結果、手術症例数の少ない施設は症例数の多い施設と比較して手術死亡率が高く、高リスク症例のみならず中リスク症例においてもその差は無視できないということが判明した。次世代育成という観点からも、小規模施設では充分な数の症例を経験することができず、新生児から成人までのあらゆる先天性心疾患患者に対して安全で良質な外科医療を継続的に提供するためには、一定以上の症例数と経験を有し、切れ目のない次世代育成能力を有する多職種ハートチームの構築が望まれる。今後、目指していくべき小児循環器医療体制は、「先天性心疾患手術を実施し、周術期医療を担う拠点施設」と、「手術を実施せずに主として診断、初期治療、亜急性期~慢性期医療、および日常の健康管理を担う連携施設」とからなる施設群によってそれぞれの地域の先天性心疾患の外科医療を包括的に担う「地域拠点化」であると考える。集約化(地域拠点化)を行うためには解決すべき問題点が数多く存在しており、一朝一夕に実現しうることではない。しかしながら「先天性心疾患を持って産まれた患者さん達に対して、新生児期から成人期まで安全かつ継続的な医療を提供する為に、「地域の拠点化」は必然かつ喫緊の課題である。