第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

委員会企画シンポジウム

委員会企画シンポジウム3(I-CSY03)
小児循環器疾患における広域患者ジェット機搬送の現状と課題

2023年7月6日(木) 10:40 〜 11:40 第4会場 (G303)

座長:笠原 真悟(岡山大学心臓血管外科),

[I-CSY3-02] 北海道における医療用固定翼機(メディカルジェット)による小児患者搬送の現状と課題

上野 倫彦1, 荻原 重俊1, 和田 宗一郎1, 田村 卓也1, 長谷山 圭司1, 南雲 淳1, 奈良 理2,3 (1.手稲渓仁会病院 小児科・こども救命センター, 2.手稲渓仁会病院 救命救急センター, 3.北海道航空医療ネットワーク研究会)

キーワード:航空搬送, 小児, 北海道

【背景】広大な北海道で高度専門医療機関は札幌などに集中しており、小児医療においては医師不足や少子化を背景とした施設集約化がさらに進むと思われる。小児心臓移植など道内で行えない医療もある。地域で提供できない高度専門医療を要する患者の救命に迅速で安全な搬送システム構築は必須である。【Medical WingsⓇの歩みと現状】北海道航空機医療ネットワーク研究会(HAMN)が実施した研究運航事業によりメディカルジェットの有効性が実証され、2017年度国庫補助事業「へき地保健医療対策等実施要項」に基づくMedical WingsⓇが開始された。実施主体は北海道でHAMNに事業を委託し、運航は中日本航空(株)が委託された。対象は道内に入院中で、当該地域で提供できない高度専門医療を要しそれが可能な施設に転院することで予後改善が期待でき、搬送中も医師による継続的管理が必要で計画的に輸送する患者である。2017年7月から2022年9月まで117例が搬送され12例(10%)は道外への搬送であった。小児は57件(49%)で新生児/乳児が42件(36%)と高い割合を示した。疾患別で小児先天性疾患が45件(38%)を占めていた。当院ではIMPELLAⓇを装着して大阪の小児心臓移植施設へ搬送した拡張型心筋症の12歳児を経験した。医師、看護師、臨床工学士計4名が搭乗、患者や器材を一体化して搭載できるバックボードを搬入口にあわせて製作し、実機で搬入出シミュレーションを行った上で、悪天候であったが総搬送時間約5時間で安全に搬送しえた。【考察】メディカルジェットの利点は、長距離運航が可能で揺れも少ないこと、医療資機材が充実していることである。道内に常駐しておらず運航調整に1日以上要することや、機内のスペースが限られていることが問題点であるが、継続的治療を要する重症患者を安全に搬送するために非常に有用なツールである。今後、緊急搬送に対応できるか、バックトランスファーに利用できるかなどが課題である。