[I-OR01-03] 房室弁逆流を合併した胎児単心室型心疾患の心房distensibilityを用いた心房機能評価と予後予測
キーワード:単室型先天性心疾患, 心房機能, 房室弁逆流
背景:胎児単心室型心疾患に合併する房室弁逆流は胎児心不全の原因となり、子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death, IUFD)のリスクとなる。しかし、逆流の重症度評価や予後予測は容易でない。目的:胎児単心室型心疾患の房室弁逆流の心房機能への影響を評価し、心房機能の予後予測指標としての有用性を検討すること。方法:2013年1月から2021年12月の期間に当院で胎児診断された74名の単心室型疾患の臨床データ、心臓超音波検査記録を後方視的に検討した。弁逆流重症度はvena contractaからnone, mild, moderate-severeに分類した。心房areaをtraceし、最大、最小心房面積を計測、心房distensibility(最大心房面積-最小心房面積/最小心房面積)を算出し、房室弁逆流のdistensibilityへの影響とその予後予測能に関して検討した。結果:胎児単心室型心疾患の内訳は右室型単心室62名、左室型単心室12名、染色体異常合併は8名であった。弁逆流はnone33名,mild25名,moderate-severe16名であり、妊娠継続中止例はnone-mild群 8名、moderate-severe群1名であった。全症例中、IUFDは6例で4例がmoderate以上の逆流を合併していた。distensibilityを弁逆流の重症度で比較すると、moderate-severe群が有意に低値であった(none-mild群 0.60±0.24 vs moderate/severe群 0.31±0.19,P<0.0001)。moderate-severe群のうち、IUFD例(4名)は非IUFD例(11名)より、distensibilityは低値であった(非IUFD群 0.39±0.21 vs IUFD群 0.13± 0.064, P=0.033)。ROC曲線を用いてdistensibilityによる重症房室弁逆流例でのIUFD発症予測の検討では、曲線下面積は0.96、ベストカットオフ値 0.18での感度91%、特異度 100%であった。結論:重症房室弁逆流を合併した胎児単心室型心疾患では心房distensibilityが低下する。本疾患群において心房distensibility評価はIUFDの予測指標として有用である可能性がある。