[I-OR01-05] 緊急の侵襲的介入を準備し帝王切開で出生した、重症心疾患胎児診断症例の予後
Keywords:胎児診断, 重症先天性心疾患, 予後
【背景】当院では、胎児診断により出生直後に緊急の侵襲的介入を要すると予想された心疾患胎児に対し、事前カンファランスやシミュレーションなどにより介入をスタンバイした上で帝王切開により分娩し、治療にあたってきた。このような最重症の先天性心疾患患者の予後を検討した。【方法】2014年から2022年までの9年間に、前述の方針をとった30症例について、診療録を用い後方視的に検討した。【結果】診断の内訳は、肺静脈狭窄を伴う右側相同8例、肺静脈狭窄を伴う総肺静脈還流異常症7例、エプスタイン病・三尖弁異形成6例、心房間交通を認めない左心低形成症候群とその類縁疾患3例、完全房室ブロック3例、重症大動脈弁狭窄2例、卵円孔・動脈管の狭小化を伴う完全大血管転移1例であった。分娩週数は29-39週 (中央値38週)、出生体重は1566-3174g (平均2541g) であり、早産症例8例の理由は胎児水腫4例、左室機能低下2例、切迫早産1例、NRFS 1例であった。30例中22例 (73%) は実際に日齢0に侵襲的介入を要した一方、3例は新生児期の侵襲的介入を回避できた。最終観察時の生存14例 (47%) に対し死亡16例 (53%) であり、死亡の内訳は新生児期4例、乳児期8例、幼児期4例であった。生存14例中正常発達は7例で、7例に発達遅滞等の神経学的後遺症を認めた。二心室疾患の生存率10/14 (71%) に対し、単心室疾患の生存率は4/15 (27%) と有意に不良であった。【考察】出生直後に侵襲的介入を要する心疾患、特に単心室疾患を有する胎児の長期予後は依然良好とはいえない。予後改善を目指し方針および手技のさらなる改善が求められるとともに、胎児期のカウンセリングにおいてはこのような遠隔予後をよく説明した上での、患者家族とのshared decision makingが重要である。