[I-OR01-06] 胎児大動脈縮窄症の予測因子の検討
キーワード:胎児診断, 大動脈縮窄症, 予測因子
【背景】大動脈縮窄症(CoA)の胎児診断は依然として困難であり、偽陽性率が高いという現状がある。【目的】CoAの胎児診断における予測因子を明らかにし、診断精度の向上を目指す。【方法】2017年10月から2022年1月までの当院胎児心臓病外来において、CoA疑いと胎児診断した24例を対象に、生後の外科的介入によって、surgery群(s群)と、false-positive群(fp群)に分類し、胎児心臓超音波検査における初回診断週数、3 vessel tracheal viewでの大動脈峡部径/動脈管径(ID比)、大動脈峡部拡張期血流の有無、左上大静脈遺残(PLSVC)の有無について2群間で後方視的に比較検討した。【結果】胎児心臓超音波検査は妊娠19週から38週に施行した。CoA疑いの胎児診断24例のうち11例(s群:45.8%, simple CoA 4例, CoA complex 5例, 単心室 1例, heterotaxy 1例)が生後に外科的介入を要した。初回診断週数(s群 vs fp群:中央値 27(四分位範囲 23-29)vs 34(30.5-35.5), p<0.001)、ID比(0.45(0.43-0.52)vs 0.59(0.51-0.82), p=0.01)、大動脈峡部の拡張期血流 (OR 21.0, p=0.004)において2群間での有意差を認めた。PLSVCの有無は有意差を認めなかった(p=0.48)。Receiver Operating Characteristic曲線による外科的介入と関連する初回診断週数とID比のcut off値はそれぞれ29週(Area Under the Curve: AUC 0.93)、0.46(AUC 0.80)であった。【考察】CoA疑いと胎児診断された症例において、初回診断週数・ID比・大動脈峡部拡張期血流が生後の外科的介入と関連した。特に妊娠後期において、心室・大血管不均衡など既知の疑い所見のみではリスクの判別が不十分であることが報告されており、今回の因子が境界領域症例における経過の予測に有用であることが示唆された。【結語】従来の疑い所見に今回の予測因子を加えることで、CoAの胎児診断におけるリスク層別化の精度が向上する可能性がある。