[I-OR02-02] 実験的肺高血圧におけるMCP1-CCR2経路の役割と機序:肺血管拡張剤と抗炎症の相乗効果
キーワード:肺動脈性肺高血圧症, 炎症, 基礎研究
【背景】肺動脈性肺高血圧(PAH)における肺血管拡張剤の有効性は確立している。しかし、PAHの機序の1つとされる炎症の抑制のPAH改善効果と既存の肺血管拡張剤の相乗効果は不明である。【仮説】ケモカインMCP1受容体CCR2の欠損は、PHラットの肺血管病変を抑制し、PDE5阻害剤と相乗効果を示す。【方法】実験1:7週齢雄Ccr2(-/-)ラット、野生型(WT)にモノクロタリン(MCT;60mg/kg)を投与し、生存率と、3週後に血行動態、肺血管病変、免疫染色、qPCR、Western blotを行った(n=40, 4群)。実験2:Ccr2(-/-)とWTに、MCT3-6週目にPDE5阻害剤タダラフィル(10mg/kg/d)を投与した生存率(n=71, 4群)、またMCT3-4週にタダラフィル投与した群で諸指標を評価した(n=20, 4群)。【結果】実験1:WTでは右室収縮期血圧(RVSP)、右室肥大の指標(Fulton index)、肺血管病変の指標(%中膜肥厚、%筋性動脈化)、血管周囲のCD68陽性マクロファージ数が増加し、Ccr2(-/-)で減少した(p<.05)。関連して、MCTラットの炎症性サイトカイン(IL6,TNFa,MCP1,IL1b,TGFb) mRNA発現亢進(p<.05)とBMPR2経路(BMPR2,pSmad1/5/9およびID1)減少(p<.05)を認めた。MCTラットでの肺血管内皮のアポトーシス (% cleaved Caspase 3 positive CD31細胞)の増加(p<.05)、内皮障害指標(PAI1)の亢進(p<.05)、NO経路(eNOS、phospho-eNOS/eNOS)(p<.05)とPDE5発現(蛋白、mRNA)の発現低下(p<.05)は、Ccr2(-/-)で回復した(p<.05)。実験2: Ccr2(-/-)は、RVSP(p<.05)、Fulton index(p<.05)、肺血管病変(p<.05)、生存率(p<.05)をWTと比して改善させ、タダラフィル投与は、さらにRVSP(p<.05)、Fulton index(p<.05)、肺血管病変(p<.05)、生存率(p<.05)を改善させた。【結語】 CCR2抑制による抗炎症作用は、PHを抑制し、関連する炎症性サイトカイン亢進、内皮障害、BMPR2系低下を抑制した。タダラフィル投与は、PH抑制で相乗効果を示し、CCR2抑制による内皮機能改善とPDE5発現低下の回復と関連した。PAHへのCCR2阻害薬とPDE5阻害剤の併用療法の可能性が示唆された。