第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺動脈性肺高血圧症評価

一般口演(I-OR02)
肺動脈性肺高血圧症評価

2023年7月6日(木) 10:10 〜 11:10 第6会場 (G301)

座長:土井 庄三郎(国立医療保健大学), 座長:石井 卓(東京医科歯科大学小児科)

[I-OR02-03] 改訂された肺高血圧基準を満たす小児の臨床像

島田 空知, 柴垣 有希, 今西 梨菜, 岡 秀治, 中右 弘一, 高橋 悟 (旭川医科大学 小児科)

キーワード:肺高血圧, 小児肺高血圧, 平均肺動脈圧

【背景】2022年にESC/ERSによる肺高血圧(PH)ガイドラインが改訂され,診断基準となる平均肺動脈圧(mPAP)は≧25mmHgから>20mmHgへと拡大された。小児でも診療上の一貫性を保つことを理由に同基準を用いるよう推奨されているが,mPAPが21~24mmHgを呈する小児例の研究は乏しい。【目的】mPAP 21~24mmHgを呈した小児例の臨床経過を明らかにすること。【方法】2005年1月~2022年12月に当院小児科で施行した心臓カテーテル検査1181件を対象とした。【結果】mPAP>20mmHgを満たした検査は207件(18%)で,mPAP 21~24mmHgを呈した検査は59件(5%)であった。少なくとも一度はmPAP 21~24mmHgを呈した46例中26例は心臓カテーテル検査を複数回行っており,19/26例(73%)でmPAPの低下を認め{24(21-51)mmHg→17(10-24mmHg)},うち13例は直近の検査でmPAP≦20mmHgに低下した。一方で7/26例(27%)はmPAPが上昇し{19(7-22)mmHg→22(21-30)mmHg},うち2例(拘束型心筋症例とDouble Switch術後の心機能障害例)がmPAP≧25mmHgに達した。また肺動脈楔入圧(PAWP)に関し,mPAP低下例には一定の傾向がないが{8(6-18)mmHg→9(4-16)mmHg, p=0.47},mPAP上昇例は全7例で上昇し{13(7-19)mmHg→14(10-23)mmHg, p<0.001},mPAP 21~24mmHgを呈した時点でのPAWPは全て≧12mmHgであった。肺血管抵抗係数はmPAP低下例では有意に低下し{3.1(1.4-9.1)W・m2→2.1(1.1-5.2)W・m2, p<0.001},mPAP上昇例では一定の傾向を示さなかった{2.3(0.8-3.8)W・m2→2.9(1.7-4.0)W・m2, p=1.0}。【考察】診断基準の改訂により新たに診断される小児PHは,ガイドライン改訂前の治療方針でmPAPが低下する例が多い。ただしPAWP高値例は,軽度のPHから増悪していく経過を辿り得る。【結論】mPAP 21~24mmHgを呈する小児PHの臨床経過は良好であり,ガイドライン改訂前の治療方針を変更する必要はない。ただしPAWP高値を伴う症例は看過しない方がよい。