[I-OR03-03] Kawashima術後に判明した体循環-門脈シャントにおけるコイル塞栓前後の血行動態
キーワード:門脈体循環シャント, 内臓錯位症候群, Kawashima手術
【背景】門脈体循環シャントにより、Kawashima術後に体循環→門脈への血流が優位となることで肺血流減少が推測され、閉鎖した症例が数例報告されている。しかしシャント内の血流方向や、閉鎖前後で肺動脈圧の変化をみた報告はない。今回Kawashima術後に体循環門脈シャントが判明し、コイル塞栓を行った症例を報告する。【症例】11か月女児。診断は左側相同、右室低形成、不均衡型房室中隔欠損症、下大静脈欠損、半奇静脈左上大静脈結合に対して、9か月時にKawashima手術を行った。術後から肝逸脱酵素とD-dimerの上昇を認め、また心臓超音波検査でcentral PAの狭窄を認めた。精査目的の造影CT(下肢から造影)で半奇静脈から門脈へのシャントが判明した。腹部超音波検査では半奇静脈→門脈の一方向性血流となっていた。Kawashima術前の造影CT(上肢から造影)では診断に至っていなかった。シャント閉鎖前の半奇静脈圧=肺動脈圧、門脈圧はそれぞれ12mmHg, 9mmHgであった。シャントはコイル塞栓した後に、n-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)を用いて閉鎖した。閉鎖後の肺動脈圧は15mmHg、SpO2は80%前後→90%前後へ上昇した。Central PA狭窄は事前に経皮的肺動脈拡張術を行っており、今回圧較差は認めなかった。コイル塞栓およびNBCA注入は当院放射線科に施行して頂いた。【考察】門脈体循環シャントは内臓錯位症候群、特に左側相同の8%で合併するという報告がある。心房圧<門脈圧<肺動脈圧という圧勾配から、Kawashima術後に門脈系への血流が優位となり肺血流が減少することが推測される。本症例ではシャント内の血流方向および閉鎖前後での肺動脈圧を測定し、実際にこの変化を確認した。内臓錯位症候群においては、下半身からの静脈が肺動脈に吻合される手術の前に、門脈体循環シャントの有無を腹部超音波検査もしくは下肢からの造影CTにて確認しておくことが良好な術後経過を得る上で有用であると考えられた。