[I-OR03-05] 胆道閉鎖症術後の末期肝不全に対する肝移植に心内修復術を先行した多脾症候群の2例
キーワード:多脾症候群, 胆道閉鎖, 肝移植
【背景】多脾症候群はしばしば複雑先天性心疾患、胆道閉鎖をはじめとした多臓器の異常を合併し、胆道閉鎖の手術後に末期肝不全に至ると肝移植を必要とする症例が存在する。当院では肝移植のリスクを考慮し、心内修復を先行させ 、肝移植を実施する方針としている。【症例】症例1は多脾、右胸心、単心房、中間型房室中隔欠損、左上大静脈左房還流の月齢5の女児。症例2は多脾、単心房、両大血管右室起始、肺動脈弁狭窄の1歳の女児。いずれも胆道閉鎖を合併し葛西術後の末期肝不全のために肝移植が考慮された。心内修復術前の肝予備能スコアは、症例1はPELD 14.5、Child Pugh 8 (grade B)、症例2はPELD 3、Child Pugh 7(grade B)で、2例とも文献上は心臓手術の中等度リスクに相当した。1例目はMustard型の心房内血流転換術を施行し、17日後に生体肝移植を実施した。 2例目は心内修復術後、門脈肺高血圧を発症したため、その治療を実施し、肺動脈圧を低下させ、心内修復術後6ヶ月で生体肝移植を実施した。【考察】末期肝不全合併例における心臓手術に関して、成人例では肝障害の程度による死亡率や危険因子などの報告があるが、小児においてはまとまった報告はない。しかし、小児例は成人より耐術性が高いとの報告がある。 2例とも術前の評価では、中等度のリスク評価であったが、肝移植に到達した。【結語】複雑心疾患合併末期肝不全の多脾症例は、中等度リスクでも、心内修復を先行させ、肝移植に到達し得る。