第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

複雑心疾患

一般口演(I-OR03)
複雑心疾患

2023年7月6日(木) 11:10 〜 12:20 第6会場 (G301)

座長:関 満(自治医科大学 小児科), 座長:伊吹 圭二郎(富山大学小児科)

[I-OR03-07] Norwood術後に行った大動脈再再建術の術前計画に用いた、柔らかい素材で造形した大動脈弓の中空立体模型の有用性

橋本 丈二1, 鈴木 彩代2, 中野 俊秀3 (1.福岡市立こども病院 放射線部, 2.福岡市立こども病院 循環器科, 3.福岡市立こども病院 心臓血管外科)

キーワード:大動脈再建術, 術前計画, シミュレーション

【はじめに】3Dプリンターを用いて大動脈弓部を軟らかい素材で造形した中空立体模型が、Norwood術後に生じた大動脈の捻じれに対する再再建術の術前計画に有用であった症例を報告する。中空立体模型は軟らかい素材で造形すると、造形途中の特に軟らかくなる工程で歪みや破損を生じやすく工夫を必要とする。造形方法の工夫および有用性とデメリットについて報告する。【症例】HLHS、2生日にNorwood手術とASD拡大術施行。経過観察中に心不全症状が進行し、心臓カテーテル検査で上行大動脈と下行大動脈の圧格差50mmHgと三尖弁逆流を認め、狭窄の機序として捻じれの存在が危惧され、CT(1.1mSv)を施行した。【方法】上行大動脈から下行大動脈までの抽出像を仮設計図とし、十分な強度のフレームを合成する設計を行い、原寸大の1.4倍に拡大し軟質素材の中空立体模型を造形した。【結果】術中では立体模型と同じ構造を認め、術前に検討したいくつかのパッチで再形成術を試みたが血液を充満させると歪みを生じ、最終的にはパッチを用いずに大動脈を短縮することで歪みのない再形成が行え、術後経過は良好である。【考察】立体模型は、硬質素材では術者自身が一部を切り取ったり動かしたりする事はできない。軟質素材の中空立体模型を術前計画に用いるため、捻じれ対策として十分な強度のフレームで補強したことで、軟質素材であるにも関わらず歪みや破損を防いだ造形が行えた。術者自身が介入部位を正確に切り取り内腔に紙粘土を充填し、再建後の血管モデルを作成することが可能であった。さらに、粘土の表面に紙を用いて必要なパッチの形状をトレースすることもでき、術前に様々な形状のパッチでシミュレーションすることが可能であった。【結論】今回提示した症例では術前に計画したパッチは有用ではなかったものの、軟質素材を用いた大動脈弓部の中空立体模型は大動脈再建術の術前計画に使用できることが確認された。