[I-OR04-02] 冠静脈洞憩室を合併した潜在性WPW症候群の4歳男児例
キーワード:WPW症候群, カテーテルアブレーション, 冠静脈洞憩室
【背景】冠静脈洞憩室(CS diverticulum;以下CSdive)を合併した潜在性WPW症候群の小児例は稀である。CSdiveを伴う潜在性WPW症候群の4歳男児例を経験したので報告する。【症例】生後2か月時に顔色不良で前医を受診し、12誘導心電図でHR 300 bpmの発作性上室頻拍を認めATPで頻拍は停止した。停止後の心電図でΔ波を認めずアテノロール投与を開始されたが、頻拍発作を繰り返したためフレカイニドを併用し、以後発作なく管理された。3歳時にEPSを施行し、頻拍は容易に誘発され、室房伝導はCSカテーテル遠位に心房最早期興奮を認めた。発作時心房最早期興奮部位はbaselineと同様であり、潜在性WPW症候群による左側副伝導路を介する房室回帰頻拍と診断とした。CL 206msで突然死リスクも考慮しフレカイニド増量単剤による内服管理の上、15kg以上まで待機してアブレーションとする方針とした。治療時、僧帽弁輪mappingで後中隔に室房伝導最早期興奮部位を認めたため同部位への通電を行なったが無効であった。このため、左房側では最良部位は存在しない可能性を考え、右房からのアプローチへ変更し、冠静脈洞造影を行ったところ冠静脈洞近位部に有茎性の憩室を認めた。憩室内を慎重にmappingしたところ、憩室頚部でKent potentialを認めたため通電を行い、室房伝導は消失した。以後、いかなる刺激によっても頻拍は誘発されず無症状で経過している。【考察】CSdiveを合併した後中隔副伝導路を伴うWPW症候群では、憩室入口部への通電が有効とする報告が多い。潜在性WPW症候群では12誘導心電図での局在診断ができないため、左側後中隔副伝導路が疑われる場合は、CSdiveの存在を念頭にCS造影を行うことが望ましい。