[I-OR05-02] 当院で経験したS-ICD植え込みとなった症例について
Keywords:S-ICD, 肥大型心筋症, 遺伝性不整脈
【背景】経静脈的にリードを挿入する従来の植え込み型除細動器(ICD)には感染、リードの不具合など種々の問題が報告されている。トラブルの少ないデバイスとして完全皮下植え込み型除細動器(S-ICD)が、2016年から本邦で使用可能となった。当院でS-ICD植え込みとなった症例を報告する。【症例】症例1:12歳女児。肥大型心筋症(HCM)で外来経過観察中。兄も同診断。走った際に意識消失し、2分後に通行人により心肺蘇生開始、8分後に装着されたAEDでは初期波形VFで1回作動後に心拍再開。当院へ救急搬送され、神経学的後遺症なし。S-ICD植え込み、ビソプロロール内服で治療中だが14歳までで1回VFによる作動があった。不適切作動はなく経過している。症例2:16歳女子。5歳時に走っている途中の失神を繰り返し、心電図でQTc 520msecと延長、ボスミン負荷試験でQT延長を認め、β遮断薬内服開始。後にKCNQ1遺伝子変異が判明し、QT延長症候群(LQT1)と確定。外来経過観察中に、走った後数秒間失神。受診時には神経学的所見含め問題なく失神時の心電図はないが、薬物治療後の失神かつ遺伝子検査で確定診断されている事からS-ICD植え込みとなった。18歳まで不適切作動含めて作動はない。【考察】HCMは若年者の心臓突然死の原因として最多で、小児では成人に比べ突然死の頻度が約2倍とされる。LQTは無治療の場合40 歳までに半数以上が心イベントを発症し、初発症状が心停止の事もある。そのため、遺伝性不整脈や心筋症症例に関しては、小児であっても明らかなハイリスク症例には突然死予防にS-ICDも選択肢に入れたデバイス植え込みを検討してもよいと思われる。S-ICDはトラブルが少ないが、オーバーセンシングなどでの不適切作動等は報告されており、今後長期的な経過を見ていく必要がある。【結語】小児でも致死性不整脈による突然死ハイリスク症例では、トラブルの少ないデバイスとしてS-ICDが一つの選択肢となりうる。