The 59th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

一般口演

染色体異常とその管理

一般口演(I-OR06)
染色体異常とその管理

Thu. Jul 6, 2023 3:30 PM - 4:40 PM 第6会場 (G301)

座長:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター小児科・新生児科), 座長:与田 仁志(東邦大学医学部 新生児学講座)

[I-OR06-01] 家族性WPW症候群9家系の網羅的遺伝子解析

山本 英範1, 郷 清貴1, 森本 美仁1, 深澤 佳絵1, 後藤 浩子2,3, 三井 さやか4, 加藤 太一1 (1.名古屋大学大学院 医学系研究科 小児科学, 2.名古屋徳洲会病院 小児循環器内科, 3.岐阜県総合医療センター 小児循環器内科, 4.日本赤十字社愛知医療センター 名古屋第一病院 小児循環器科)

Keywords:WPW症候群, 全エクソーム解析, 肥大型心筋症

【緒言】WPW症候群の有病率は3~5/1000人でほとんどが孤発例であるが、稀に常染色体顕性(AD)遺伝の家族例がある。原因遺伝子としてPRKAG2(OMIM:#194200)が知られており、またMYH6も1家系のみ報告されている。この度、我々は家族性WPW症候群9家系に対して全エクソーム解析(WES)を用いて網羅的原因遺伝子解析を行ったので報告する。【方法】AD遺伝が疑われるWPW症候群の家系において、書面同意を取得後に血液からゲノムDNAを抽出した。各家系の発端者に対してPRKAG2(NM_016203.4)のサンガーシーケンスを行い、バリアントが確認された場合は家系内共分離の確認および病原性の検討を行った。PRKAG2の病的バリアントを有さない家系では、全発症者に対してWESを行い、心臓関連遺伝子501種における低頻度(Minor allele frequency<0.005)かつ病原性が高い(ACMGガイドラインPathogenicまたはLikely pathogenic)バリアントを選出した。【結果】発端者を基準として第一度近親まで発症が確認された「小家系」5つ、第二度近親まで確認された「中家系」3つ、第三度近親まで確認された「大家系」1つの計9家系を対象とした。PRKAG2病的バリアントが確認されたのは1つの中家系のみであった(c.298G>A, p.G100S:既知バリアント)。他8家系でWESを行った結果、大家系でMYL3の病的バリアントが確認された。他の7家系では原因遺伝子の特定には至らなかった。【考察】MYL3は肥大型心筋症の原因遺伝子だがWPW症候群の報告はない。興味深いことにWPW症候群の既知の原因遺伝子であるPRKAG2MYH6はともに肥大型心筋症の原因にもなることが知られており、両疾患には共通する発症メカニズムがあると考えられ、これはMYL3がWPW症候群の原因となることを間接的に支持するとも考えられる。一方で多くの家系で原因遺伝子の同定には至らず、未知の原因遺伝子が存在する可能性や多因子遺伝の可能性が示唆された。