[I-OR06-02] 左冠動脈口閉鎖症による心肺停止を呈した、RNF213 p.R4810K多型とCBL病的バリアントの両方を有する小児例
キーワード:左冠動脈口閉鎖症, RASopathy, RNF213
【背景】左冠動脈口閉鎖症は極めて稀な病態であり、その発症メカニズムは明らかではない。心肺停止を契機に左冠動脈口閉鎖症が明らかとなった、RNF213多型とCBL病的バリアントの両方を有する小児例の経験を報告する。【臨床経過】14歳男児。前医でNoonan-like syndrome (CBL [NM_005188] c.1228-2A>G(hetero)を同定済み)、僧帽弁逆流症と診断され、ACE阻害薬を内服していた。体育の授業でランニングをしていたところ突然卒倒。AEDで電気ショックを実施後、心拍再開。当院へ搬送され、低体温療法を実施された。AED記録から心室細動を確認され、その後の心臓超音波検査では左冠動脈起始部の明瞭な描出が困難であった。さらに胸部造影CTで左冠動脈起始異常を疑われ、心臓カテーテル検査で左冠動脈口閉鎖症と、右冠動脈から左冠動脈支配領域へ流れる側副血行路を確認した。僧帽弁逆流症は虚血性乳頭筋機能不全によるものと判断した。その後左冠動脈主幹部形成術を実施し、神経学的後遺症なく退院した。スクリーニングで行った脳MRIでは類もやもや病を検出された。本症例におけるangiopathyの遺伝学的背景を検索した結果、RNF213 [NM_001256071.3] c.14429 G>A p.R4810K多型(hetero)を同定した。また、遺伝性心疾患遺伝子パネルTruSight Cardio Sequencing Kit (Illumina社)を用いて検索したが、前述のCBL以外の病的バリアントは認めなかった。【考察および結論】RNF213、CBLと先天性冠動脈奇形との関連についての報告は皆無である。一方でRNF213 p.R4810K多型は日本人成人における狭心症・心筋梗塞のリスク因子であり、また、CBLが含まれるRAS/MAPKシグナル伝達経路内の遺伝子異常による先天性冠動脈奇形は複数報告されている。本報告はRNF213 p.R4810KまたはRASopathyを有する患者群における突然死リスクについて注意喚起するものであり、各群で冠動脈形態異常の有無を積極的に検索する意義を示すものである。