[I-OR06-06] 先天性心疾患を伴うAlagille症候群における脳血管異常の合併
キーワード:Alagille症候群, 脳血管異常, スクリーニング
【背景】Alagille症候群(ALGS)はNotchシグナル経路を構成するJAG1あるいはNOTCH2の異常により、末梢性肺動脈狭窄をはじめとした先天性心疾患(CHD)や、胆汁うっ滞性肝障害、血管の異常など全身の臓器障害を合併するが、症例毎にその差異が大きい。本症の生命予後を規定する因子として、各臓器における重症度に加え、脳血管障害が挙げられる。そこで、CHDを合併したALGSにおける脳血管異常の有無について検討する。【方法】当科通院中あるいは通院既往のある、CHD合併のALGS6例を対象に検討した。診療録を用いて後方視的に調査した。【結果】年齢は1歳3か月~29歳、男女比は3:3。全例で新生児期から乳児期早期の胆汁うっ滞性肝障害あるいは収縮期心雑音を契機に精査し、ALGSと臨床診断した。CHDの内訳は5例が末梢性肺動脈狭窄(うち1例で心室中隔欠損を合併)、1例が肺動脈弁狭窄であった。遺伝学的検査を実施した4例すべてにおいてJAG1遺伝子の病的バリアントを認めた。脳血管評価として5例にMR angiography(MRA)を行い、そのうち3例で両側あるいは片側の内頚動脈狭窄を認めた。初回MRA評価時期は1歳未満が2例、小学生が2例、大学生が1例であった。【考察】我が国の全国調査では、ALGSに合併するCHDを除いた血管系異常の合併割合は10%程度と報告されており、米国においても同様である。しかし、その評価機会は一定していない。今回の検討ではCHD合併ALGSにおいて脳血管異常が高頻度に認められており、注意すべき合併症の一つである可能性が示唆された。【結論】先天性心疾患を合併したALGSでは、脳血管異常を合併するリスクが高い可能性がある。脳血管障害は遠隔期の生命予後に影響を与えるため、特にCHD合併ALGS患者においてMRAによるスクリーニングは有用であると考えられるが、その至適時期などは今後検討が必要である。