[I-OR07-01] 先天性心疾患の新生児における早期低酸素療法の心拍変動への影響
キーワード:自律神経, 心拍変動, 低酸素療法
【背景】大動脈縮窄症や左心低形成症候群といった体循環動脈管依存性疾患において、ショック状態で開始される低酸素療法の有効性は確立されている。しかしながら、全身状態が維持された状況で、比較的早期に予防的に開始される低酸素療法は、バイタルサインの変化が軽微であり、その意義は十分に確立していない。本研究では心拍変動解析を用いて、早期低酸素療法前後の自律神経指標の変化を解析した。【方法】2021年12月から2022年10月までに福岡市立こども病院NICUに入院した体循環動脈管依存性疾患の新生児のうち、記録のとれた7名についてモニター心電図の心拍変動解析を行った。低酸素療法は、レントゲンでの肺うっ血像や高SpO2、頻脈傾向などを目安にショック状態を呈する前に開始し、FiO2 0.16-0.2で症例ごとに目標SpO2を定めて調整した。【結果】患者は左心低形成症候群および類縁疾患4名、大動脈縮窄および大動脈縮窄複合2名、大動脈肺動脈窓+大動脈離断1名。在胎週数(週)(中央値(最大-最小値)、以下同)39(37-41)、出生体重(g)3108(2512-3782)、低酸素療法の開始日齢(日)1.8(0.9-5.6)、初回手術到達日齢(日)7.2(3.1-8.0)、低酸素療法前後の上肢SpO2 (%)95(88-99)→90(86-94)(p=0.16)、平均血圧(mmHg)54(43-67)→55(37-56)、呼吸回数(回/分)46(31-92)→57(41-102) 。低酸素療法前後2時間の心電図波形の心拍変動解析では、平均心拍数(bpm)148(137-163)→144(125-156)(p<0.05)、%LF(%)15.2(6.63-18.1)→12.3(3.63-25.0)、%HF(%)15.6(1.34-23.3)→20.9(0.95-20.6)(p=0.10)、LF/HF 1.00(0.54-6.00)→0.82(0.067-0.82)であった。【考察】低酸素療法開始前後で、有意な血圧の上昇は確認できなかったものの、有意な心拍数の低下と、副交感神経指標である%HFの上昇傾向を認めた。比較的早期の低酸素療法は、循環動態を安定化し、自律神経バランスを副交感神経優位にできる可能性がある。