[I-OR07-05] 心膜切開後症候群と水分バランス・内分泌動態の関連
キーワード:心膜切開後症候群, postpericardiotomy syndrome, 副腎皮質ホルモン
【背景】心膜切開後症候群(PPCS)は在院期間に影響を与える術後合併症であるが、発症メカニズムは不明である。治療に副腎皮質ホルモンが奏功することに着目し、内分泌動態が発症に関わるという仮説を検証した。【方法】心臓手術後に集中治療室で24時間畜尿を行い、尿中コルチゾルとアルドステロンの1日総排泄量を評価し得た56例を対象とした。水分バランス、血清浸透圧、血行動態指標等との関連を解析した。【結果】PPCSを発症し治療を要した症例(PE)は12例(21%)で、PE群では手術時月齢、体表面積が大きかった(p<0.05)。PE群の水分出納は非PE群と比較し術後1日目にインバランス(+16.1±25.3, -5.3±33.3ml/kg, p=0.04)となったが、2日目以降は差が無かった。術後1日のPE群の実測GFRは高い傾向があり (p=0.055)、21trisomyを除外すると、GFRは有意に高く、血清Na値および浸透圧、中心静脈圧はいずれも正常値に近い低値を示し(p<0.05)、PE群の早期循環適応が示唆された。しかしながら、術後2-3日目には血清Na値および浸透圧は更に低下し、過剰希釈が示唆された (p<0.05, 2日目)。両群間で人工心肺時間、大動脈遮断時間、術後3日までのコルチゾル・アルドステロン、中心静脈圧、平均動脈圧等血行動態指標に差はなかったが、術前BNP値はPE群で低値を示した(p=0.012)。【結論】PPCS発症には術後1日目の水分出納、術前の低BNPの関与が示唆された。PE群では高い静脈キャパシタンスによって急速に循環適応するが、術後2-3日目にかけて電解質・浸透圧バランスを崩し、これがPPCS発症に寄与している可能性がある。術前ナトリウム利尿ペプチドの術後早期水分出納への影響、術後早期のバゾプレシンの関与を解析する必要がある。