[I-OR08-05] 心室圧波形のみから得られる心室駆出率 ―単心室・複雑な心室形態の患者における有用性の検討―
キーワード:駆出率 , 心室圧波形, 心室血管カップリング
【背景】フォンタン循環を含む単心室症例には左室型・右室型単心室、左右心室いずれかが低形成である症例などが混在しており、その心室容積・駆出率の測定・算出は困難であり誤差を生じることも少なくない。一方、心室圧波形は容積計測に比較して再現性が高く数心拍繰り返して計測することができ、心室形態の多様性を問題としない。我々は心室圧波形を用いた心室駆出率の計測を試みた。【目的】単心室循環症例において心室圧波形のみから算出した駆出率の実効性について検証した。【方法】単心室症例(B-T shunt、Bidirectional Glenn、Fontan術後例)35例(6か月~35歳)を対象とした。心臓カテーテル検査施行時に行った心室造影から得られた駆出率と心室圧波形から得られた駆出率とを比較検討した。心室・血管カップリングSingle beat法におけるmaximum isovolumic pressure (Pmax)をSigmaPlot ver.15を用いて求めた。収縮末期圧(ESP)は心室圧波形の二次微分が最小値を示す値とした。Ees=(Pmax-ESP)/SV、Ea=ESP/SVであり、Ees/Ea=(Pmax/ESP)-1と表される。また、Ees/Ea=(ESP/ESV)/(ESP/SV)=SV/ESV=EF/(1-EF)とすると、EF=1-(ESP/Pmax)となる。心室圧波形から求めたEes/EaおよびEF(pressure) と心臓カテーテル検査時に造影から得られたEF(cath)とを比較検討した。【結果】全症例でPmax, ESPは計測可能であった。EF(pressure)はEF(cath)と相関が得られた(r=0.41, p<0.05)。Ees/EaもEF(cath)と有意な相関が認められた(r=0.58, p<0.05)。【考察】EF(pressure)では算出において一部 volumetric法を用いてVo=0mLと仮定している点でEes/EaよりもEF(cath)よりも相関が低かった可能性があると考えた。【結語】心室圧波形から得られるEes/Ea、EF(Pressure)は複雑な心室形態をもつ症例においても駆出率を捉えることが出来る有用な方法である。