[I-OR09-01] 当院の成人移行外来患者におけるプレコンセプションケアの課題
キーワード:プレコンセプションケア, 成人移行外来, 成人先天性心疾患
【目的】当院循環器内科で成人移行外来を開設して6年が経過し、移行期を過ぎ挙児を希望する症例も増加している。挙児について相談があった症例の病状、社会的背景、外来での対応を後方視的に確認し、当院でのプレコンセプションケアの課題と今後の体制構築の方向性を検討した。【結果】2022年12月時点で、明らかに自立困難と考えられた症例を除く一般的な挙児年齢と考えられる18歳以上40歳未満の症例は、男性23名、女性29名、計52名、うち既婚男性4名、女性10名、既挙児男性1名、女性9名であった。挙児について相談があった症例は、既婚男性3名、既婚女性5名、未婚女性9名で、それぞれの75%、50%、47%であった。未婚男性からの明確な相談はなかった。相談内容は、男性からは多い順に疾患の遺伝、自身の社会保障、不妊についてであり、女性からは自身の妊娠・出産の可否、内服薬の胎児への影響、パートナーやその家族への説明、疾患の遺伝についてであった。女性の中には、自身の病状を考慮して挙児希望はないが、パートナーとの意思の相違に悩む例も複数あった。相談に必要な診療時間は1時間程度であり、パートナーと一緒に受診した人は男性2名、女性4名であった。相談後に、既婚女性3名が妊娠・出産に至った。【考察】小児期発症心疾患患者のプレコンセプションケアは、病状評価や管理のみならず心理的あるいは社会的問題への対応など、多岐に渡り必要であることが確認された。当初、挙児希望の女性にとって必要なケアを提供することを念頭に置いていたが、男性や挙児を希望しない女性にとっても重要であること、またそのパートナーのケアも同時に行う必要がある現状が明らかになった。また挙児が現実的になる以前の小児期、移行期において、いかにこの問題と向き合うかが大きな課題であると実感した。保険診療としての壁も大きいが、現状を踏まえて他科や多職種との連携を図り体制構築を目指す必要があると考えられた。