[I-OR09-06] 当院におけるInspirisを使用した肺動脈弁置換術の中期成績
Keywords:PR, PVR, Inspiris
【背景】Severe PRに対するPVRは、近年より早期に介入される傾向にある。早期のPVRは遠隔期に再置換術が必要なことがあり、複数回の手術は癒着の問題から容易でないことが多い。長期耐久性や経カテーテル治療の容易さから開発されたInspirisは、肺動脈弁位に対する使用成績の報告は乏しい。当院では2019年頃より将来的な経カテーテル治療による介入を見越しInspirisを使用している。【目的】Inspirisを使用したPVRの中期成績を報告する。【方法】2019年4月〜2022年11月にInspirisを用いて初回PVRを行った44名を対象に、術後成績を後方視的に検討する。【結果】原疾患はTOFが36例(81.8%)と最多で、RVOTへの手術介入後PVRまでの期間の中央値は26.5年(1.4-52.2年)で手術時年齢中央値は34.6歳(6.2-62.7歳)。累積生存率は1年で97.6%、3年で97.6%1、5年で97.6%。死亡は1例で、PVR後にATを契機に血圧低下、蘇生となりPCPSを装着したが死亡した。右心系への再手術回避率は1年で100.0%、3年で91.7%、5年で91.7%。右心系への再手術は1例で、Ao-RVシャント残存による右心不全に対し手術を行った。術後NYHAは、I度 22例、II度 20例、III度 1例。術後PRは、0が12例、trivial 28例、mild 3例、moderate 1例。最大肺動脈弁通過速度の平均は2.2m/s(1.3-3.6), 最大圧較差の平均は20.9mmHg(17.9-50.8)。観察期間中に肺動脈弁に対する経カテーテル治療を行った症例は無し。【考察】術後多くの症例で軽度のPSを認めた。ウシ心嚢膜弁はleafletの閉鎖に圧力が必要と言われており、影響した可能性があるが、将来的なPSの進行や右心機能への影響、経カテーテル治療における優位性に関しては、少なくとも現時点では不明である。【結論】Inspirisを使用したPVRの中期成績は概ね許容できるものであった。長期使用における右心系への影響や、経カテーテル治療における優位性について、今後慎重にフォローアップしていく必要がある。