第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

川崎病

一般口演(I-OR14)
川崎病

2023年7月6日(木) 16:30 〜 17:20 第7会場 (G314+315)

座長:上砂 光裕(日本医科大学多摩永山病院小児科), 座長:小林 徹(国立成育医療研究センター データサイエンス部門)

[I-OR14-03] 冠動脈瘤を合併した川崎病患者へのARB/ACEiの冠動脈瘤退縮効果の検討-KIDCARサブ解析-

菅沼 栄介1,3, 三浦 大2,3, 小山 裕太郎2,3, 小林 徹3, 鉾碕 竜範3, 沼野 藤人3, 古野 憲司3, 塩野 淳子3, 布施 茂登3, 深澤 隆治3, 三谷 義英3 (1.埼玉県立小児医療センター 感染免疫・アレルギー科, 2.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 3.日本川崎病学会KIDCARグループ)

キーワード:レジストリ研究, 冠動脈瘤退縮, ARB/ACEi

【背景】川崎病(KD)に冠動脈瘤(CAA)を合併すると生命を脅かす冠動脈イベントのリスクとなるが、退縮やイベント回避を促す治療法は現時点で確立していない。以前の我々の基礎研究データから、降圧薬として知られるアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、乳酸菌により誘導したマウス冠動脈炎を有意に抑制する効果が見いだされた。【目的】 CAAを合併するKD患者に対するARB/ACEi(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)の併用が退縮に寄与するかを検討すること。【方法】2015年以降に川崎病と診断され、かつ発症30病日以降に心エコーで中等瘤以上(冠動脈実測値≧4mmまたはZ-score+5以上)を呈した症例を対象とした。本研究は、中等瘤以上のKD患者に対する多施設共同レジストリ研究(KIDCAR)のサブ解析である。【結果】53施設より登録された179症例を対象とした。KD発症年齢の中央値は2.2歳で、男児は137例(77%)、不全型KDは47例(26%)、巨大瘤は36例(20%)、ARB/ACEi併用は35例(19.5%)であった。巨大瘤の合併率は、ARB/ACEi併用群(10/35、29%)が非ARB/ACEi併用群(25/144、17%)と比較して高い傾向にあった(p=0.16)。観察期間中、CAAが小瘤または正常径にまで退縮した割合は両群で同等であった(62% vs 59%、p=0.83)。さらに冠動脈径(Z-score)は、ARB/ACEi併用群(-4.4±0.6)で非ARB/ACEi併用群(-3.1±0.2)と比較して減少幅が大きい傾向にあった(p=0.30)。他の臨床変数による調整後も、ARB/ACEi併用はCAAの退縮に関した有意差を認めなかった(adjusted HR 1.69, 95% CI 0.93-3.08)。【結論】ARB/ACEi併用群では、巨大瘤が多かったが冠動脈径の減少幅が大きい傾向にあり、退縮率は非併用群と同等であった。今後、さらに症例の蓄積を行うことで、ARB/ACEiの併用によるCAAの退縮への寄与を見いだせる可能性がある。