第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心室頻拍・心室細動

ポスター発表(I-P01-1)
心室頻拍・心室細動

2023年7月6日(木) 10:10 〜 11:10 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:牛ノ濱 大也(大濠こどもクリニック)

[I-P01-1-09] 負荷試験にて誘発困難であったカテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)の母子例

藤田 瑞穂1, 谷口 和夫1,2, 京 清志1, 呉 英俊1, 香山 一憲1, 村林 督夫1 (1.沼津市立病院 小児科, 2.谷口小児科医院)

キーワード:カテコラミン誘発多形性心室頻拍, 家族例, 誘発困難

[背景]CPVTは運動負荷等によって心室頻拍(VT)、心室細動(VF)が誘発される致死性不整脈の一つとされており遺伝子異常を伴う事が報告されている。今回運動負荷試験で多形性心室頻拍が誘発されず診断に難渋したCPVTの一家系を経験し母子両方の小児期の心電図を比較した。また、症状の経過中BNP値やトロポニンT値も検討した。[症例]8歳男児失神のため当院に救急搬送された。5歳時にもマラソン中に意識消失しホルター心電図、トレッドミル運動負荷心電図で異常は認めなかった。今回意識消失時にBNP値、トロポニンT値の一過的上昇を認めていたが、ホルター心電図は異常なくトレッドミル運動負荷心電図で負荷中に単形性心室性期外収縮の二段脈を数発認めるのみで失神の原因の最終診断に至らなかった。母は11歳時水泳の練習中突然溺れ当院へ搬送された。来院時は意識清明で脳波・ホルター心電図では異常を認めず、トレッドミル運動負荷心電図では負荷中に単型性の心室性期外収縮を2発認めるのみであった。当時QT延長症候群と考えられβブロッカーを5年間内服していた。最終的に母子の遺伝子検査を行いRyR2 receptorの変異を認めCPVTと診断した。[考察]今回同定された変異の部位は母が思春期以降大きな症状なく成人となっている事より、症状が軽くVT/VFは負荷試験等で誘発されにくい事が考えられる。児は症状と経過よりCPVTが強く疑われたが負荷試験のみでは確定診断には至らなかった。CPVTは薬物療法に加え強い運動制限を行うため確定診断が必要だが、遺伝子検査は現時点では商業ベースではなく、どの時点で遺伝子検査を行うか難渋するところである。失神の前後でのBNP値、トロポニンT値の変化も心原性失神を疑うひとつの所見となる可能性があると考えられた。[結論]今回遺伝子検査にて診断が確定したが、遺伝子の変異の部位によって診断に難渋する場合がある。