[I-P01-2-05] 先天性心疾患を合併する成人21トリソミー患者の移行期医療の現状と課題
キーワード:21トリソミー, 成人先天性心疾患, 移行期医療
【背景と目的】21トリソミー(T21)患者の平均寿命は約60歳となり成人期・老年期を迎える患者が増加しているが、成人T21患者に対する医療体制の整備は十分ではない。本研究は当院に通院する先天性心疾患(CHD)を合併する成人T21患者の心疾患および全身合併症の状況を調査し、課題の解決につなげることを目的とする。【方法】2023年1月時点で当院通院中のCHD合併T21患者の心疾患と全身合併症の状況を診療録から後方視的に検討する。収集する情報は年齢、性別、body mass index (BMI)、合併CHD、心疾患に対する投薬の有無、NYHA分類、合併疾患(肥満(BMI>25)、睡眠時無呼吸(SAS)、甲状腺機能異常、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症)の有無、初診時質問票の記載者、当院以外のかかりつけ医の有無とする。【結果】対象のT21患者は30例(男:女 14:16, 年齢 15~41歳, 平均25歳)だった。合併CHDの主診断の内訳は房室中隔欠損症13例、ファロー四徴症9例、心室中隔欠損症6例、動脈管開存症2例で、23例で修復術が行われていた。肺高血圧合併は5例でいずれも未修復例だった。NYHA分類はIが26例、II 3例、不明1例、心疾患に対する投薬あり9例、診察の自己中断経験あり1例だった。全身合併症は肥満10例、SASあり0例、なし5例、不明25例、甲状腺機能異常あり3例、なし2例、不明25例、糖尿病あり1例、なし9例、不明20例、高脂血症あり3例、なし11例、不明16例、高尿酸血症あり13例、なし4例、不明13例だった。初診時質問票は18例で記載があり、記載者は母14例、本人2例、父1例、施設職員1例で、当院以外のかかりつけ医がある患者は13例だった。【考察・結語】CHD合併T21患者に対する診療は養育者の協力のもとに継続されており、心疾患の状態が安定している患者が多い。しかし、CHD以外の合併症については十分な診療を受けていない可能性がある。今後の患者高齢化を見据えた地域での診療体制の整備が必要である。