第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

染色体異常とその管理

ポスター発表(I-P01-2)
染色体異常とその管理1

2023年7月6日(木) 10:10 〜 11:00 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:内山 敬達(社会医療法人愛仁会高槻病院小児科)

[I-P01-2-06] 集学的アプローチによるtreat and repair を施行できた重症肺高血圧合併心室中隔欠損を伴ったDown症候群1乳幼児例の術後肺高血圧評価

内山 敬達1,2, 永尾 宏之1, 岸 勘太2, 根本 慎太郎3, 山下 麻紀4 (1.社会医療法人愛仁会高槻病院小児科, 2.大阪医科薬科大学小児科, 3.大阪医科薬科大学胸部心臓血管外科, 4.大阪市立総合医療センター)

キーワード:Down症候群, 肺高血圧, treat and repair

【緒言】Down症候群はしばしば上・下気道閉塞や肺低形成など複合的要因による肺高血圧(PH)増悪因子を認めるため心疾患の治療時期に苦慮することがある。【症例】胎児エコーで胎児水腫(胸腹水、全身浮腫)の指摘あり、在胎35週4日に2,316gで帝王切開にて出生。21 trisomy、VSD、ASD、PDA、PHの診断。胸腹水貯留のため日齢26まで胸腔ドレーン留置、遷延性PHのため日齢35まで気管挿管管理。生後2か月時にPDA結紮術施行。室内気で低酸素血症(SpO2<90%)があるため日齢155に在宅酸素療法で退院。うっ血肺の進行なく生後6か月時に手術適応評価のため心臓カテーテル検査を施行。肺体血流比(Qp/Qs): 0.93、平均肺動脈圧(mPAP): 42 mmHg(Pp/Ps:0.98)、肺血管抵抗(Rp):10.4 U/m2。検査中PH crisisを合併、根治手術は困難と考えタダラフィル(1mg/kg/日)の内服を開始した。心エコー上PHの進行はなかったが1歳頃から気道感染を契機にSpO2低下が顕著となり入退院を繰り返した。アデノイドによる上気道閉塞、睡眠時無呼吸が原因と考えらえ、在宅人工換気(CPAP)を導入し呼吸管理を継続しSpO2の低下は減少した。1歳6か月時にアデノイド切除術施行。1歳8か月時に心臓カテーテル検査施行。Qp/Qs:1.7、mPAP: 37mmHg (Pp/Ps: 0.91)、Rp: 4.84U/m2(Rp/Rs: 0.35)と改善傾向にあった。100%酸素負荷でQp/Qs: 3.2、Rp: 2.85U/m2(Rp/Rs: 0.18) と可逆性のPHと判断、1歳9か月時にVSD閉鎖術を施行。術後PH所見は改善傾向にありタダラフィルと夜間の在宅酸素を継続した。術後14か月時に心臓カテーテル検査施行、mPAP:34mmHg(Pp/Ps:0.59), Rp:5.5 U/m2(Rp/Rs: 0.43)とPHは残存しておりエンドセリン受容体拮抗薬を追加する方針とした。【考案】Down症候群の複合的な肺高血圧増悪因子に対して、他科を含めた集学的な段階的治療を行い、VSD閉鎖術を施行できたが、今後も長期的なPHに対する治療戦略が必要である。