[I-P01-3-05] 心臓脱を伴うCantrell症候群の児の1例
キーワード:Cantrell症候群, 心臓脱, ファロー四徴症
【背景】Cantrell症候群は胸骨下部欠損、正中腹壁欠損、横隔膜欠損または付着異常、心膜部分欠損、先天性心内奇形を伴う症候群である。同症候群に心臓脱を伴う症例は、心内修復術を施行し生存することは困難とされ、生存率が低い。胎児期より心臓脱、ファロー四徴症と診断され、出生後に心膜保護を行い、心臓カテーテル検査と心内修復術を行った3歳女児を報告する。【症例】3歳女児。一絨毛膜二羊膜双胎であり、同胞に心奇形はなかった。本児は在胎22週に胎児診断で心臓脱、ファロー四徴症と診断した。在胎35週に母体のHELLP症候群のため緊急帝王切開で出生した。出生後に心内奇形はファロー四徴症、三心房心、心房中隔欠損症、単一冠動脈と診断した。出生当日に小児外科による臍帯心臓癒着剥離術、形成外科による左大腿の表皮移植による心臓被覆術を行った。月齢9で心臓カテーテル検査を行い、心内修復術の適応と判断し、ファロー四徴症根治術、三心房心修復術を行った。心臓の還納はできなかった。閉創に際し、皮弁を用い胸壁皮膚欠損を閉鎖した。術後は水分、血圧管理に2か月の集中治療管理を要し、術後半年で退院した。術後1年での心臓カテーテル検査では、右室の胸郭移行部で軽度の圧格差は残存するものの、術後経過は良好だった。3歳9か月となった現在では、有意語を喋り、つかまり立ちが安定し、遅れがあるものの発達は良好である。【考察】心臓脱の管理での問題点は、胸郭形成を行うべきかという点である。本症例は胸郭の不足部分に人工物を用いることを考慮したが、縦隔内圧の上昇が懸念され、皮弁による胸郭皮膚閉鎖を選択した。心臓脱は心膜の保護や、胸郭の心内構造への影響等、多科にまたがり多角的な視点から治療の選択をする必要がある。