[I-P01-3-06] 右大動脈弓-左鎖骨下動脈起始異常-右動脈管に右声帯麻痺を合併した22q11.2欠失症候群の一例
キーワード:大動脈弓異常, 声帯麻痺, 22q11.2欠失症候群
【はじめに】右大動脈弓(RAoA)-左鎖骨下動脈(LSCA)起始異常-右動脈管(RDA)は発生学的に左第IV咽頭弓動脈と左第VI咽頭弓動脈の退縮により生じ、RAoAにRDAが合併しLSCAが第4枝として出る稀な大動脈弓発生異常である。このような大動脈弓異常では右第VI咽頭弓動脈がRDAを形成するため、右反回神経はRDAを反転走行する。今回、RAoA-LSCA起始異常-RDAに加え、右反回神経麻痺によると考えられる右声帯麻痺を合併した22q11.2欠失症候群の一例を経験した。【症例】在胎37週5日、体重2,615g、正常経腟分娩で出生した女児。顔貌より22q11.2欠失症候群が疑われ、後にFISH検査で確定診断された。生下時より上気道狭窄症状や嗄声を認め、CPAP管理が必要であった。造影CT検査でRAoAと太いRDAを認めLSCAは第4枝として起始し食道後方を走行していたが、明らかな血管輪は認めなかった。左肺動脈は主肺動脈近位から起始し狭小であった。RDAは内科治療に反応なく、日齢18に外科的結紮術が施行された。術後も上気道狭窄は残存しており、喉頭ファイバーにて右披裂外転障害を認め右声帯麻痺と診断された。現在、生後7ヶ月となり高流量鼻カヌラ療法で保存的に呼吸管理されている。【考察】大動脈弓異常は左右第IV・第VI咽頭弓動脈、背側大動脈第8分節の6カ所でのリモデリング異常により発生する。本症例では存続した左背側動脈第8分節と退縮した左第VI咽頭弓動脈に連続性がなく憩室形成に至らないため血管輪は生じておらず、大動脈弓異常が上気道狭窄の原因とはならなかった。左第VI咽頭弓動脈近位部である左肺動脈は退縮の影響を受け起始部の狭小化を来たし、相対的血流増多となったRDAの拡張により、RDAを反転する右反回神経が胎児期に長期圧迫されたため右声帯麻痺に至ったものと考えられた。生下時からの上気道狭窄症状に加え、発生学的な考察に基づくことで、術中操作による反回神経障害の可能性は無いと判断することができた。