[I-P01-4-01] 集中定数モデルを用いたフォンタン循環におけるフェネストレーションの効果の検討
キーワード:フォンタン, フェネストレーション, シミュレーション
【背景】フォンタン手術におけるフェネストレーションの効果は、前負荷を増加させることにより心拍出量を増やすとされるが、どのような条件下で最も効果が得られるかは十分に分かっておらず、その適応基準はない。【目的】コンピュータ・シミュレーションを用いて、フォンタン循環におけるフェネストレーションの効果を検証する。【方法】コンピュータ上にフォンタン循環のモデルを作成した。心房・心室は時変弾性モデルを、血管系は三要素ウインドケッセルモデルを用いて再現した。フェネストレーションは、簡易ベルヌーイ式を用いて記述した。各パラメタは、フェネストレーション・フォンタン手術症例6例の平均的な血行動態に合わせて調整した(体表面積 0.58 m2、心拍数 80 bpm、血圧 87/45 mmHg、中心静脈圧 11.6 mmHg、SpO2 91.2%)。このモデルにおいて、心収縮性・心拡張性・体血管抵抗・肺血管抵抗を変化させ、フェネストレーションの効果を検証した。【結果】フェネストレーションは、肺血管抵抗上昇時に、中心静脈圧を有意に低下させ(4.7 WU m2時に19.5から16.2 mmHg、6.1 WU m2時に21.7から17.9 mmHg)、循環を維持するために必要な有効循環血液量(SBV)を低下させる(4.7 WU m2時に593から528 ml、6.1 WU m2時に661から570 ml)。一方で、心収縮性の低下(3.28 mmHg/ml時にSBV -10ml)、心拡張性の低下(0.136 /ml時にSBV -7 ml)、体血管抵抗の上昇(37.1 WU m2時にSBV -16 ml)に対する効果は限定的であり、SpO2の低下が大きなデメリットとなることが分かった。【結語】フェネストレーションは、肺血管抵抗の上昇に対して有効に心室の前負荷を増やして、血行動態を改善するが、心機能自体が低下している場合や後負荷が増加している場合には、血行動態をほとんど改善しない。このことよりフェネストレーションは、肺血管抵抗の上昇が懸念される症例において最も有効であると考えられた。