[I-P01-4-08] 乳児期に発症したMRSA感染性心内膜炎に対して,人工腱索による再建術を施行した1例の中期経過
キーワード:感染性心内膜炎, 人工腱索, 乳児
【背景】乳児における僧帽弁疾患として乳児特発性僧帽弁腱索断裂があり,人工腱索による再建術が一定の成績を収めている.しかし感染性心内膜炎に対する手術選択は,形成術が困難な症例も多く,その手術リスクはいまだに低いとは言い難い.【症例】10か月女児.前医に急性胃腸炎の診断で入院.四肢の間代性痙攣を認めCRP 18まで上昇.精査で施行したMRIで右化膿性股関節炎と診断された.切開排膿術が施行され関節液からMRSAが検出された.VCM投与開始も頭部CTで多発脳梗塞,脳膿瘍を認めた.心臓超音波検査で僧帽弁前尖に浮動性の疣贅(長径10mm),MR moderate-severeを認めた.感染性心内膜炎が疑われ当院に転院.VCMからLZDおよびTEICに変更も新規脳梗塞が出現.血液培養の陰転化を認めたため,転院7日目に疣贅切除及び僧帽弁形成術を行った.右側左房切開でアプローチ.僧帽弁はA1−A2の間がprolapseしており,10mmほどの繊維組織の付着を認めた.A2の腱索は一部断裂していたため切除した.弁尖ならびに前後乳頭筋には感染所見を認めないため,CV-6を用いて人工腱索を立てた.逆流テストでCoaptationは良好であった.術後,MR mildに改善し,脳膿瘍も内科的治療のみで治癒した.12週間の静脈注射治療後,LZDとRFPの内服に切り替え,転院91日目に退院した.現在術後4年近くフォローアップし体重が20kgを超えたが,MR trivialで経過している.【考察】僧帽弁に疣贅を要する感染性心内膜炎に対して,人工腱索による再建術を施行した.十分な抗生剤投与により再感染は来さなかった.体格の成長に対しても,乳頭筋が成長することで弁尖の高さは維持され,中期的に逆流制御できている.