[I-P01-5-01] miR-25-3p は低酸素曝露下のヒト肺微小血管内皮細胞においてHIF 1-αの発現を亢進させ、Glenn術後に肺動静脈瘻を引き起こす
Keywords:肺動静脈瘻, グレン術後, マイクロRNA
【背景】Glenn術後に発症する肺動静脈瘻 (G-PAVM) は、肺動脈内への肝静脈血の欠如が原因とされているが、詳細な分子学的発症機序は不明である。【目的】G-PAVMの発症に関してmicro RNA (miRNA) との関連を検討する。【方法】G-PAVFの診断は末梢肺動脈へのコントラストエコーで行った。同一患者のGlenn術後 (G-PAVF診断時) ・Fontan術後 (G-PAVF改善後)と年齢をマッチさせたコントロール(軽度の肺動脈弁狭窄患者)の血清を用いてmiRNAの網羅的解析を行い、患者検体の肺動脈血清で抽出されたmiRNAのreal-time qPCRを行った。ヒト肺微小血管内皮細胞 (HMVEC-L) に対して、miR-25-3pを高発現または発現阻害し、細胞内のmRNAと蛋白をreal-time qPCRとwestern blottingで評価した。また、遺伝子導入した細胞をtube formation assay・wound healing assay・CCK-8 assayで評価した。【結果】 miRNAの網羅的解析で、miR-25-3pがGlenn術後患者の血清に特異的に発現が増加していた。G-PAVFを発症したGlenn術後群 (n=11)、チアノーゼ性心疾患患者のコントロール群 (n=8) 、G-PAVFが改善したFontan術後群 (n=12) の肺動脈血清内でmiR-25-3pの発現を比較したところ、Glenn術後群で特異的に発現の亢進を認めた (relative expression : 2.86±1.27 v.s. 0.62±0.27 v.s. 0.79±0.89, p<0.001) 。低酸素曝露下でmiR-25-3pを高発現させたHMVEC-Lでは、コントロールと比較して、有意にHypoxia Induced Factor 1-α (HIF 1-α) とVascular Endothelial Growth Factor A (VEGFA) mRNAの発現が上昇しており、管腔形成能・増殖能・遊走能が亢進した。低酸素暴露下で細胞内miR-25-3pを発現阻害したHMVEC-Lでは、管腔形成能・増殖能・遊走能は減弱した。【考察・結語】 miR-25-3pは低酸素曝露下のHMVEC-L内でHIF 1-α/VEGF-A axisの活性化を通じて血管新生の亢進を引き起こし、Glenn術後においてG-PAVF発症の一因となり得る。