[I-P01-5-02] 凍結損傷によって引き起こされるイベリアトゲイモリの心臓再生過程にみられる特徴的な遺伝子発現の解析
キーワード:心臓再生, 遺伝子, モデル動物
【背景】哺乳類の心臓は再生しないが、イモリなど一部の脊椎動物は、心臓を再生させる能力をもつ。【目的】イベリアトゲイモリの心室に凍結損傷を与えてその後の再生を誘発する方法を開発し、凍結損傷後の心臓再生の過程を、すでに確立されている心室切断による再生と比較、解析すること。【方法】イベリアトゲイモリの心臓に対して、心室凍結損傷モデルは液体窒素で冷却したプローブを接触させて凍結損傷を行った。心室切断モデルは、心室の遠位部分を1/3程度切除した。形態学的・組織学的な評価としてH-E染色および、Micro CTによる解析を行った。S期の細胞を標識し細胞増殖パターンを観察を行った。さらに、心室試料から抽出したRNAに対して、次世代シークエンスによる遺伝子発現解析を行った。【結果】心室凍結モデルでは、凍結損傷処置後4週間から損傷領域が縮小しはじめ、正常心筋組織の回復が確認された。2つのモデルで2倍以上の変化を示した転写産物に対して、遺伝子オントロジー(GO)分析を実施した結果、創傷治癒、細胞分裂、免疫系に関連する遺伝子が多く検出された。心筋に関係する蛋白の遺伝子では、Myh9は上昇していた一方でMyh7は低下していた。心臓の発生に関係する遺伝子であるHand2、Nkx2.5の上昇は認めなかった。【考察】心室凍結損傷モデルは処置後の高い生存率と、心筋細胞の増殖を伴う回復が見られたことから、心臓再生モデルとして適している。凍結損傷モデルと心室切断モデルで、両方のモデルで共通して発現レベルが変化した遺伝子群は、心臓再生の調節に関与している可能性が高い。【結論】本研究において確立したイベリアトゲイモリにおける心室凍結損傷モデルは、他のモデルとの比較解析が可能であり、有用な実験系と言える。これを用いて心臓再生のメカニズムを解明することが期待される。