[I-P01-5-03] 出口戦略から見た事業化への必須要素を同時展開するクラスIV 心臓手術材料の新規開発~真のアカデミアと企業のコラボレーションの形
Keywords:手術材料, 医療機器開発, 産学官連携
【背景】我が国の新規医療機器・材料開発の事業化への低迷には、様々な社会構造的原因が論じられている一方で、医師の“事業化への必須要素と製造販売業企業とのかかわり方”への無知と、“アカデミアという守られた領域”への逃避が変わらぬ問題である。この打開のため、私たちの開発実例を提示する。【方法】事業化のプロセスは“市場調査⇒設計⇒検証⇒審査⇒製造販売”と示されるが、薬事規制が絡み互いに影響し不可分である。これらプロセスの精査の欠如からの事業化への開発期間・コストの予見性消失が多くの失敗例に特徴的である。我々は、この克服のため、コンセプトの試作品起こしと技術・製品規格を決定する“技術開発プロジェクトチームPT”、知財戦略と学術報告を連動させる”知財PT”、治験開始に必要な有効性・安全性を検証(POC取得)するGLP基準動物試験検討と実施の“非臨床・薬事安全性PT”、 GMP/ISO基準の治験・量産製造体制を構築する”品質保証PT”、 保険償還・販売戦略を講じる”販売PT“、そして治験・製造販売承認申請対応の“臨床PT”の全てを同時展開した。PMDAとの折衝も加え、このすべのPTにアカデミアである外科医が積極的かつ協調的に関与した。【結果、結語】日常臨床で小児心臓外科医が多く経験する海外製既存品の持つ普遍的問題を解決するべく、“遠隔期の再手術の頻度を減らすために、自己組織修復を促し、かつ伸張可能な心臓手術用パッチ(クラスIV)”を、開発を貫くニーズ仕様と定め、明確な事業化をゴールとする産学連携(ものづくり企業と第1種製造販売業取得企業とのコンソーシアム)を2014年に開始した。特許査定2件、経済産業省・AMEDおよび日本小児循環器学会の支援、先駆け審査指定制度の対象品目指定、商標決定を通じ、2022年4月に臨床試験(治験)で主要評価項目を達成した。現在承認申請、上市準備、海外事業化に取り組んでいる。