[I-P01-5-06] 小児重症心不全治療における機械的循環補助導入のジレンマ
キーワード:小児重症心不全, 機械的循環補助, MCS
【緒言】小児重症心不全では、ECMOやLVADなどの機械的循環補助(MCS)が治療の選択肢となる。その適応判断は急を要する状況で迫られる事が殆どであるが、急性期を乗り越えるためだけでなく、慢性期の管理までも考慮した慎重な適応判断が求められる。眼前の患者の救命のため、とにかく積極的に補助循環を導入するのも一案であるが、長期的にそれが最善の選択とは考えにくい症例もあり、治療選択の際に医療者にはジレンマが生じる。【方法】2022年に当院ICUに入室した小児心筋症4例、小児心筋炎4例につき、MCSを中心とした治療内容や治療方針の決定等について、後方視的に検討した。【結果】心筋症4例の内訳はECMO導入1例、MCSなし3例であった。後者3例のうち、MCS適応を検討したが導入しなかった例が2例あった。症例1: 1歳2ヶ月、拡張型心筋症の女児、体重4kg。体外式LVADを考慮したが、体格の小ささ・右室機能の悪さ・装置の稼働状況などから導入を見送った。症例2: 12歳、骨肉腫を基礎疾患とする薬剤性心筋症の女児、体重35kg。Destination Therapyとしての体内式LVADを考慮したが、右室機能の悪さ・慢性期管理の困難さから導入を見送り、入院中に死亡した。一方、心筋炎4例の内訳はECMO導入3例、MCSなし1例であった。前者3例はいずれも軽快しECMOから離脱、後者1例はMCS不要例であった。【結語】心筋症例では、装置の不足や移植待機時間の長さなどを考慮し、MCS導入により慎重な判断が求められた。導入しない選択をした場合、早期死亡も充分に考えられ、医療者には葛藤も生じる。時間の許す限り多職種による充分な検討が必要で、家族への説明も重要である。一方、心筋炎例ではその可逆性に期待し、MCSを導入しやすい状況であった。