第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心筋疾患

ポスター発表(I-P02-1)
心筋疾患1

2023年7月6日(木) 11:10 〜 12:00 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:山澤 弘州(北海道大学大学院医学研究院 小児科)

[I-P02-1-02] 心内膜線維弾性症乳児の病理学的検討

仲本 雄一, 豊野 学朋, 山田 俊介 (秋田大学 小児科)

キーワード:心内膜線維弾性症, 乳児, 突然死

【症例】5か月, 男児【経過】咳嗽と哺乳不良を主訴に二次医療機関救急外来を受診した. 翌日も状態に改善がなく, 急性気管支炎, 脱水症として入院治療が開始され, 経静脈補液を受けていた. 入院3日目に多呼吸, 呻吟, 経皮的酸素飽和度低下に気付かれた. 胸部単純X線で心拡大, 心臓超音波検査で左心系拡大が確認された. 重度の代謝性アシドーシスを呈しており, 人工呼吸療法下で当院に救急医療入院となった. 到着時, 用手換気下で陥没呼吸を呈しており, 末梢脈拍動触知不良の状態であった. バイタルサインは呼吸数73回/分, 経皮的酸素飽和度100% (吸入酸素濃度100%), 心拍193拍/分, 体温39.3℃, 血圧98/72mmHgであった. 血液生化学検査で軽度のCK上昇と腎機能障害, 高カリウム血症を認めた. 超音波検査で左心室拡張末期径49mm, 同後壁厚5mm, 短縮率11%, 重度の僧帽弁閉鎖不全, 正常冠動脈起始を認めた. 中心静脈カテーテル挿入術直後より徐脈となり, 心肺蘇生に反応せず死亡となった.【病理検査所見】身長60.0cm, 体重7.0kg. 肉眼所見: 著明な左心室腔拡大及び肥大と心重量増加, 左心室心内膜面の広範な弾性繊維組織増殖あり. 光学顕微鏡所見: 心筋細胞肥大及び核腫大あり. 一部に心筋細胞萎縮, 波状変化, リンパ球浸潤あり.【臨床病理診断】心内膜弾性繊維症【考察】心内膜線維弾性症は乳幼児期に発症し, 1つあるいは複数の心室及び心房に弾性線維・膠原線維の増生による心内膜の肥厚を呈する予後不良な疾患であり, 突然死の原因となり得る. 本邦での希少疾患サーベイランスによると発症数は年間2-5例と稀な疾患である. 特発性と先天性心疾患や拡張型心筋症, 慢性心筋炎等に合併する二次性に分類され, 乳児期に重度の心不全症状を呈する. 二次性との鑑別には凍結心筋検体における遺伝子検査や感染症検査が有用な場合がある. 乳幼児期に急激に発症する左心不全症状を認める症例では, 本疾患を鑑別する必要がある.