第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心筋疾患

ポスター発表(I-P02-1)
心筋疾患1

2023年7月6日(木) 11:10 〜 12:00 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:山澤 弘州(北海道大学大学院医学研究院 小児科)

[I-P02-1-03] 心筋肥厚のために左室容量が小さく閉鎖困難と判断した心房中隔欠損症と心房頻拍を合併した1例

赤木 健太郎1, 馬場 志郎1, 松田 浩一1, 石塚 潤2, 福村 史哲1, 久米 英太朗1, 美馬 隆宏2, 平田 拓也1, 滝田 順子1 (1.京都大学医学部附属病院 小児科, 2.大津赤十字病院 小児科)

キーワード:心筋肥厚, 心房中隔欠損症, 心房頻拍

【背景】著明な左室心筋肥厚は一回心拍出量の低下から全身循環管理が困難となる。今回我々は、心房中隔欠損(ASD)を伴う左室心筋肥厚症例において心房頻拍(AT)を併発し全身循環管理に難渋した一例を経験した。【症例】症例は10ヶ月男児。在胎38週6日、出生時体重2802g、Apgar score 3/6点で出生。胎児期より不整脈あり。出生後も間欠的ATを認め、また著明な左室心筋肥厚とASD、全身の小奇形合併も認めた。生後ATのコントロールに難渋し、最終的にフレカイニド・ソタロール・プロプラノロール併用でコントロール可能であった。以降AT再燃なく経過、ASDは閉鎖傾向になく左室心筋肥厚も持続。生後10ヶ月時にヒトメタニューモウイルス感染から呼吸循環不全に陥り集中治療管理を開始。AT再燃、左室心筋肥厚とASDのため心拍出量が稼げず全身循環管理に難渋し、更には肺炎からARDSへ進展したことによる長期の呼吸循環管理を要した。集中治療管理開始後約1ヶ月でようやく抜管。今後の循環管理のためにもASD閉鎖が可能か心臓カテーテル検査による評価を行うも、ASD閉鎖試験で左房圧・左室拡張末期圧が20mmHg前後へ上昇し全身血圧も低下したため閉鎖は困難と判断。Nasal High-flow Cannulaで呼吸状態は安定化し全身循環も改善したが、その1週間後に突然の心停止から永眠された。【考察】著明な左室心筋肥厚を伴うASDが、ヒトメタニューモウイルス感染をきっかけとした呼吸循環不全管理を困難にした症例であった。ご家族の希望がなく遺伝学的背景の検索は行わなかったが、臨床所見からはRASopathyが疑われる症例であった。【結語】本症例の左心室心筋肥厚に対するエナラプリルなどの心筋保護薬やβブロッカー含めた心不全治療の必要性や開始時期、またASDに対する治療戦略について議論を行いたい。