[I-P02-1-04] 先天性左室accessory chamber;重症心不全を呈した2例に対するイバブラジンの有効性
キーワード:左室accessory chamber, 心不全, イバブラジン
【背景】左室accessory chamberは左室腔が筋層構造を有する副腔と広くつながる稀な疾患である。予後は不明な点も多いが、心臓移植が必要と考えられた症例の報告もある。【症例1】3ヶ月女児。生後2ヶ月、多呼吸、哺乳不良が出現し、前医に入院した。拡張型心筋症様の病態を呈し、ミルリノン依存状態となり、当院へ搬送された。各種検査で左室中隔から下壁より大きく瘤状に突出するaccessary chamberを認め、高度の左室収縮障害を呈していた。心室再同期療法studyでは急性効果は乏しく適応外と判断、カルベジロールを少量から開始したが副作用のため中止した。その後、イバブラジン内服を開始し漸増、安静時心拍数が約20%低下し100/min前後となった。以後、BNPは低下、ミルリノン中止可能で退院した。【症例2】日齢0男児。胎児心エコーで左室の拡大と左室憩室、重度の僧帽弁逆流(MR)を指摘されていた。39週、体重2990gで出生、生後26分で挿管管理とした。心エコーで左室側後方に大きく張り出すaccessary chamberを認め、左室収縮は不良であり、重度のMRを認めた。大動脈弓まで動脈管経由の逆行血流を認め、lipoPGE1、ドブタミン、ミルリノンを開始した。生後半日で大動脈弓の順行性血流が増加したためlipoPGE1を中止した。洞性頻脈が続いており、生後2週よりイバブラジンを開始し、心拍数コントロールを行った。生後4週にドブタミン中止、生後2ヶ月に抜管、生後3ヶ月に点滴管理から離脱、以後内服による心不全治療で緩徐に体重増加がみられている。【考察】2例ともイバブラジンは副作用なく導入可能であり、徐拍化効果により心機能改善を認めた。先天的に非生理的に大きな容積を持ち、駆出率の低い左室が特徴の本疾患においては、新生児期乳児期早期特有の生理的頻脈が低拍出症を引き起こす。心拍数コントロール主体の治療で心不全の改善が得られた経過は、今後の乳幼児期心筋症の治療に応用できる可能性がある。