[I-P02-1-06] Carvedilol投与により、軟部肉腫再発例に対するPazopanib投与が可能であったがん治療関連心機能障害の一例
Keywords:がん治療関連心機能障害, Pazopanib, Carvedilol
【背景】Pazopanibはマルチチロシンキナーゼ阻害薬で、軟部肉腫治療において近年その有効性が認知されている。しかし心不全やQT延長などの心毒性を有し、同じく心毒性を持つAnthracycline系薬剤を含んだ化学療法が選択されることが多い軟部肉腫患者において問題となりうる。今回、心毒性によりPazopanib投与を中断したが、Carvedilolの投与により再開可能であった一例を経験したため報告する。【症例】11歳女児。X-4年7月に軟部肉腫を発症し、Doxorubicin 225mg/m2を含んだ治療で寛解した。X-3年12月に再発、Anthracycline系薬剤(Doxorubicin換算で35mg/m2)を含んだ治療で再寛解した。再発時の化学療法中、X-1年8月に心電図でⅡ、Ⅲ、aVF、V5-6誘導に陰性T波の出現とQT延長を認めがん治療関連心機能障害が疑われたが、心臓超音波検査では心機能の悪化を認めずX-1年11月に再発治療を完遂した。再々発予防の維持療法としてX-1年12月からPazopanib内服を開始したが、心毒性を懸念しCarvedilolを0.04mg/kg/日から開始し漸増する方針とした。X年4月、Carvedilol 0.08mg/kg/日内服下に心臓超音波検査でGLS(global longitudinal strain)=-18.3%の収縮能低下と左室壁の菲薄化、心嚢液貯留を認めた。Pazopanibの投与を中断し超音波所見は改善したためPazopanibの影響と考えた。Carvedilolを0.14mg/kg/日まで漸増し、X年10月からPazopanibを再開、以降中断なく継続している。【考察】がん治療関連心機能障害にβ遮断薬が有効であることが知られている。近年Pazopanibにおいてもラットを用いた実験でCarvedilolの有効性が報告されており、本症例の経過からPazopanibによる心毒性においてもβ遮断薬が有効である可能性が示唆される。