[I-P02-1-07] 心筋症様の心合併症を呈した神経芽腫の一例
キーワード:神経芽腫, 心筋症, 心不全
【背景】神経芽腫は交感神経節や副腎髄質などから発生する小児がんの一つで、脳腫瘍を除いた小児固形腫瘍の中で最も頻度が高い。神経芽腫の腫瘍細胞では、神経伝達物質であるカテコールアミンの産生が増加し、代謝産物であるHVA、VMAなどを尿検査で調べて診断を下すことができる。今回腹部腫瘤を主訴に紹介となった神経芽腫の症例で、初期より心筋症様変化を呈し循環管理を行った症例を経験した。神経芽腫における心筋症の報告は極めて稀ではあるが複数認められており、若干の文献的考察とともに報告する。【症例】症例は5か月男児。腹部腫瘤を主訴に近医より紹介となり、初診時より心臓超音波検査でLVDd:36.2㎜(156%N)、EF:40%、BNP:840pg/mLと左心系の拡張、収縮低下を認め、特に心基部が心尖部よりも収縮能が落ちており拡張型心筋症、特にカテコラミン心筋症様の変化を呈していた。高血圧は認めなかった。心不全管理としては、カテコラミンは使用せず、利尿剤、ミルリノン、塩酸ランジオロール投与を行った。特に塩酸ランジオロール投与による徐伯化(3µg/kg/minで150→120bpm)は投与開始直後より明瞭に観察された。腫瘤は膵左側の後腹膜腫瘍でサイズは10cm大と非常に大きいが、血管狭小化等は認めなかった。尿中HVA、VMAの増加を認め、遠隔転移およびMYCN遺伝子増幅なく、Stage3の中間リスク群神経芽腫と診断され、化学療法を開始された。化学療法に伴い腫瘤は3㎝大まで縮小化し、腫瘍マーカーの正常化も確認し9クールの化学療法で終了した。腫瘍マーカーの正常化に伴い、心臓超音波検査上もLVDd:26.8㎜(98%N)、EF:81%、BNP<5.8pg/mLと劇的に回復した。【結語】カテコラミン産生を伴うような神経芽腫では、稀ではあるが心機能の低下するケースがみられる。特に化学療法開始時には、腫瘍崩壊などによる循環動態変動や、大量補液の必要性もあり、早期より慎重な循環管理が求められる。