[I-P02-2-07] 合併症に対する積極的な治療介入により, 在宅医療を継続している18トリソミー児の一例
キーワード:18トリソミー, 肺高血圧症, 低酸素血症
【緒言】重症染色体異常の児は救命困難なことも多く, たとえ命が救われても, その後, 多様で重篤な合併症に直面する. 私たちの施設で, 肺血管閉塞性病変や側彎・胸郭変形, 肺実質障害等の複合による強い低酸素血症の対応に苦慮しながらも, 積極的な検査・治療介入をおこなうことで在宅医療を継続している18トリソミーの症例について報告し, 児と家族の幸せについて考えたい.【症例】18トリソミー(モザイク型)の4歳女児. 在胎37週4日, 1824gで出生した. 心室中隔欠損症, 動脈管開存症があり, 日齢9に動脈管クリッピング術を, 3か月時に肺動脈絞扼術を実施した. 両親は児を愛しみ, 児の救命や予後改善を強く希望した. 2歳時に心内修復について検討したが, 肺動脈絞扼術後にもかかわらず肺高血圧症が進行し, また呼吸状態も悪く, 適応外と判断した. 心不全, 側彎・胸郭変形による換気血流不均衡, 誤嚥の反復による肺実質病変により呼吸障害が進行し, 気管切開術および在宅人工呼吸器導入(2歳時), 胃瘻造設・噴門形成術(3歳時)を行い病状は安定した. しかし, その後さらに低酸素血症が進行し, 在宅酸素の最大流量を使用してもSpO2 75%以上を維持できず, 在宅医療の継続が困難になった. 心臓カテーテル検査で肺高血圧症の進行が認められたが, 酸素負荷により肺血管抵抗が低下し肺血流が増加したため, 肺血管拡張薬の投与を開始した. その結果, 低酸素血症は在宅医療の継続が可能となるまで改善した. 【考察】近年, 重症染色体異常の児に対する積極的な治療が予後を改善するという報告が増えている. 私たちの施設でも, 命を天秤にかけるようなハイリスクな治療は提案しがたいが, 家族の希望を真摯に受け止め, 児の生命力を信じて積極的に検査・治療介入をおこなうことにより児の予後を改善し, 児と家族に残された大切な時間を延ばすことが重要と考えている.