[I-P02-3-06] 初回手術で三心房心に伴うlevoatriocardinal veinを残した1例
キーワード:levoatriocardinal vein, 三心房心, 先天性肺静脈体静脈側副血行路
【背景】levoatriocardinal vein(LACV)は肺静脈と左心房の接続が保たれたまま存在する先天性肺静脈体静脈の側副血行路であり、比較的稀な疾患とされる。LACVは胎児期のsplenic plexusの遺残であり、僧帽弁や心房間交通の狭窄/閉塞により左房の流出障害を伴う症例に多く認められ、胎児期の左房減圧に寄与するため、開存が必要である。【症例】胎児期に両大血管右室起始、左房および左室低形成、僧帽弁閉鎖、卵円孔閉鎖に加え、肺静脈還流異常が疑われていた。出生後の超音波検査、造影CT検査で左右上下の肺静脈は共通肺静脈腔を形成したのちに低形成の左房へ流入しており、三心房心(Lucas-Schmidt分類IB2)と診断した。また、左上肺静脈から無名静脈、冠静脈洞にそれぞれつながる太いLACVが確認された。肺静脈から体静脈への左右短絡を生じ、総肺静脈還流異常症と同じ血行動態であった。両大血管右室起始、僧帽弁閉鎖、卵円孔閉鎖により、急激な肺うっ血の進行が予想されたが、LACVが肺静脈減圧経路として機能し、待機的に日齢9にLACVを残したまま心房中隔欠損作製術、肺動脈絞扼術を行った。術後徐々に共通肺静脈腔-左房間の狭窄が進行したが、LACVによる減圧で肺うっ血の進行はなく経過している【考察】肺静脈、左室流入路に狭窄/閉塞があり、LACVを合併している症例では、肺うっ血悪化を防ぐために、初回手術で意図的にあえてLACVを残す術式も考慮される。