[I-P02-4-05] 無名静脈turn-downにより静脈系減圧を行った多脾症、単心室症、下大静脈欠損、心内型Fontan術後の1例
Keywords:単心室症, Innominate vein turn-down procedure, Fontan
【背景】通常Fontan術後の静脈系減圧には下大静脈-肺動脈間の人工血管と心房に交通を設けるfenestration作成を行う。【症例】1歳11ヶ月、8.8㎏、女児。多脾症、単心室症、肺動脈閉鎖症、下大静脈欠損、奇静脈結合、右胸心、apicocaval juxta positionの診断で段階的手術を生後2ヶ月時(左modified BT shunt、肺動脈形成術)、1歳2ヶ月時(total cavopulmonary shunt術)、1歳10か月時(intracardiac total cavopulmonary connection)に行った。Fontan術前の肺動脈圧は心臓カテーテル検査で9mmHg と低値であり、かつhepatic factorの肺動脈への十分な分配を企図したことからfenestrationは作成しなかった。術後腹水および胸水が貯留し、全身性の浮腫が遷延した。肺高血圧治療を行った上でも、中心静脈圧は依然として18mmHgと高値であったため、外科的治療による減圧が必要と判断した。無名静脈を離断し、心房へ接続するturn-down手術を行った。同時に形態的狭窄に対し右肺動脈形成、洞不全症候群に対しペースメーカー留置を行った。術後、中心静脈圧は10mmHg に低下、浮腫改善、胸水貯留なく術後29日目に自宅退院した。SpO2は酸素1L/min投与下で93%であった。無名静脈turn down手術は静脈角を含む静脈系の減圧によって、Fontan術後のリンパ系合併症(蛋白漏出性胃腸症、鋳型肺炎、乳び胸、腹水貯留、リンパ浮腫)を改善すると報告された手法である。Failed Fontanにおいて、症例毎の解剖学的な形態を考慮し、fenestration作成と並び、治療選択肢として考慮されうる。【結論】無名静脈turn-downによりhepatic factorの肺への流入を損なうことなくFontan failureを改善した。